2010年8月19日(木)
賀内です。
先週に続いてきょうも「こわい話・不思議な話」をお送りしました。
やはり多かったのが「虫の知らせ」。
授業中に手が震えだして、何事かと思ったら、かわいがってくれていたおじさんがその時刻に亡くなっていた...という話など、多数いただきました。
こういうお話を紹介するたびに、思い出すことがあります。
江戸川乱歩というと、「怪人二十面相」などで知られる、日本を代表するミステリー作家ですね。
ページをめくるのが怖くなってくるようなおどろおどろしい作品も多数書いているのですが、その乱歩自身は、怖い話が平気だったかどうか。
「私(乱歩)も子供の頃は、夜の墓地などが人並みに怖かったが、大人になって世渡りにあくせくするようになってからは、そんなものが怖くなくなってしまった」
エッセイで、あらましこんなことを書いているのです。
わかる気がしますねえ。「世渡りにあくせく」している身には、お化けや幽霊より、借金とり(なんて古い言葉ですが)や、しめ切りだと言って原稿を催促してくる編集者のほうが、乱歩はよっぽど怖かったのでしょう。
ミステリーの第一人者のような乱歩が言っていることですから、説得力のある話です。
ひとつ、疑問があります。
乱歩は、奥さんのことは怖くなかったのかな?
乱歩は、作家専業になる前の若い頃はいろいろな職業を転々として、暮らしも豊かではなく、奥さんが働いたり下宿屋を開業したりして、一家を支えていました。ですから、苦労をさせた奥さんには頭が上がらなかったのではないか、などと勝手な想像をめぐらせています。晩年は、孫を可愛がった好々爺の面も見せていたそうですが。
小説で読者をさんざん怖がらせていた乱歩が、実は奥さんが怖かった、などというのは、想像するだに面白い光景です。