金融経済概況
ABS news every.取材記 2014.6.16(月)
地方局では、スポーツも経済も同じ記者が担当することが散見されます。
経済はかなり苦手なジャンルです。
日本銀行秋田支店は毎月半ばに「金融経済概況」なるものを発表しています。
日本全国どの支店でも発表しているようで「秋田県の景気がどうか?」をまとめたリポートです。
再び日銀秋田支店に取材に行ってきました。
会見の様子です。経済のプロが揃ってます
経済専門家の記者ではない記者やアナウンサーのために(?)、秋田支店として「かなり噛み砕いた発表をしています」。
どの県でも同じように発表しているようです。
発表された金融経済概況。WEBでも見られます。きっと優しく書いてくれているんですよ。それでも田村には難しい・・・≒中学生にはわからない
新聞やテレビのニュースでは県内の景気について日銀秋田支店は
「消費税の駆け込み需要の反動減が見られるが、基調としては緩やかな回復を続けている」
として、5月からの景気判断を据え置きました。
硬ーく(難く)言うとこんな感じですが、もっと噛み砕いて言うとこんな感じです。
「消費税の駆け込み需要の反動があって買い控えはあちこちで続いているという声を聞くけれど、
景気が悪くなるほどの買い控えじゃない。
思ったほど影響が多くないようだ。
もっと言えば全体的には景気回復の雰囲気がある。
ただ5月発表のときと比べて、秋田の景気が大きく上向いてまっせとは言えないし、かといって悪くなっているわけでもない、
だから全体の景気判断は『変わらない』にしてみました」
秋田支店は硬いイメージをやわらかくしてます
経済が苦手な記者の心の中には
「秋田支店が発表しているニュアンスを変えたくないし、間違ったことを原稿に書いて責任を問われるよりも、
よくわかんない難しい言葉をそのまま書けば間違いは起こらない」
という邪な心も芽生えます。
かといってほかの記者の前で
「あのー 発表にあった言葉。良く聞くんですがちょっと意味がわかんないんです、教えてください」
という
「聞くは一時(いっとき)の恥 聞かぬは一生の恥」を
実践する勇気を持つ記者はレアです。
こんなときはこっそりあとで電話で広報に聞きます。
「不勉強で申し訳ありません、教えてください」と言うと、専門家は日銀だろうと、省庁だろうと優しく教えてくれます。
プロ中のプロ 小田信之秋田支店長。名前検索すると素人には超難解な金融の本も執筆されていることがわかります
「こいつ全然分かってないな」と思われようが関係ありません。
でもテレビや新聞のニュースを毎日見ていても、しっかり勉強しないと分からないんです。
大学で専門に学んできた事は人それぞれでしょうし、法学部だったけど電子デバイスなんでもこいとか、文学部でもマクロ経済はなんでもわかるなんていう人はそういないはず。なによりもテレビラジオで見たり聞いたりする人は普通の人たちです。情報の伝え手が理解できないものは、伝言ゲームをしてもほとんど伝わらないはず。
話は戻って新聞やテレビのニュースでは
「生産は緩やかに増加している」
「個人消費は基調としては堅調に推移している」
「住宅投資も底堅く推移している」
と報道しています。
経済のグラフは難しい
でこちらは恥をかいた結果、分かった事があります。
・緩やかに増加
・底堅く推移
・増加基調
「堅調に推移」しているというのは、プラスの増加でそれほどグラフの傾きは大きくないけれど、しっかり(堅調に)増えていますよというニュアンス。
さらによく出てくる「基調」という言葉。
「○○講師の基調講演」とか「白を基調とした内装」
日銀では「公共投資が増加基調にある」なんて使います。
秋田支店の外観を撮影する菅原陽久カメラマン
「基調」は広辞苑によると
「作品思想学説行動などを一貫して流れる基本的な傾向」「主張」
という意味があります。
「増加基調」というのは、増加傾向にある、もしくは弱いけど増加してまっせというニュアンスです。
「すんごく増加してます!」と言うほどではない増加をこのように表しています。
また「底堅く推移」というのは、需要ラインぎりぎりでグラフにしてみたらマイナスだけれど、かなり水平に近い状態だとのこと。
「経済?おめーつぇーんだってな」 byカメレオン
それをまとめると
「生産は緩やかに増加している」
「個人消費は基調としては堅調に推移している」
「住宅投資も底堅く推移している」
と報道されているものを池上彰さんばりに翻訳して
「みんなが物を買ってくれるから物を作る。
工場での生産が増えている=みんなが物を買っている
生産は緩やかに増加≒製造業での収益は緩やかにUPしています」
「各家庭では買い控えるようなこともなく
決して多くはないけれどみんなそれなりに
しっかりと買い物しています」
「住宅のような値の張るものが景気が悪けりゃ売れない。
しかも消費税増税のこともあって住宅の売れ行きだけみたら景気がわるいんだけど、
悪いなりにも程度があって、ギリギリのライン許容範囲での売れ行きダウンです」
となるんでしょう。
さすがに日銀リポートなので、田村の会話調の文章を掲載すると急に嘘っぽくなり格調も低くなるので(笑)、もう少し経済っぽい言葉を使って、しかもそのなかでも微妙なニュアンスを表すような言葉をチョイスしながら、経済概況を作成していると思われます。
日本銀行秋田支店は秋田市大町のダイエーがあった通りにあります
蛇足ですが、ニュースの言葉は「書き言葉」と「話し言葉」の中間と言われています。
あまり砕けすぎてもニュースっぽくない。
かといって、新聞で使うような漢字をみないと何を言っているかわからない言葉では伝わらない。
だからその中間になるんでしょう。
日本銀行も15時、午後3時でシャッターが閉まります
日本銀行秋田支店の総務課長の堀口さんが本当に丁寧に田村の質問に答えて下さいました。ありがとうございました。
日々の経済の研究 大変お疲れ様です。こちらももう少し勉強させていただきます。
さらに蛇足で
元ABSの吉村優アナウンサーに何年か前
「もう日銀秋田支店で預金口座作った?」
とからかったったら、ちょっとだけ考えて
「え、作れないですよね?」
と2割ぐらいの疑問符つきで返してきました。ひっかかりませんでした。
今では東京証券取引所からのニュースを伝えると同時に、経済ニュースの原稿も出稿しているそうです。