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2014年09月3日

前野浩太郎さん

ABS news every.取材記 2014.3.14(金)

田村の夏季休暇中のブログは「偉人列伝」でお送りしています。3回目です

4/9(水)に放送した偉人が今回の主人公です。

3/14 秋田中央高校で世界的にも有名な昆虫学者の特別講演が行われました。

秋田中央高校のOBでまだ34歳。幼いころからの夢を叶えて研究者になり、今アフリカを救う研究に取り組んでいる農学博士です。

その昆虫学者の名前は前野・ウルド・浩太郎さん
専門は「飛蝗(バッタ)」です。

世界的なバッタ研究の第一人者で、世界的に注目を集めている農学博士なんです。

前野さんのステージは日本から13000㎞離れたアフリカのモーリタニア・イスラム共和国。
国土の7割が砂漠に覆われたモーリタニアでは、農業が基幹産業です。
その農作物に、数年に一度壊滅的な被害を与えるのがサバクトビバッタの大群なんです。

なにからお伝えしていいのやら、ワールドワイドすぎて困ってしまいますが、現状から簡単に。

何年かに一度アフリカでは「バッタ」が大量発生します。

農作物を始め、植物という植物を食い荒らしながら広大なアフリカ大陸を移動します。
日本人では想像がつきませんが、100億匹にも達する大集団が5000kmにも及ぶ距離を大移動をするとも言われていて、バッタが通ったあとにはまさにぺんぺん草も生えません。大発生してしまってからは止める術がありません。バッタが小さいうちに駆除するぐらいしかないのです。「アリエナイ理科の教科書」では、火炎放射器で燃やしても巨大な火の玉になってそれが迫ってくるだけだと書いてありました。

場合によっては飛行機も墜落するし、鉄道も使えなくなる。
なんにせよ植物を食い荒らされてしまうのはいただけません。
人間にとっては生死にかかわります。

そして今まで誰も解明していなかったサバクトビバッタの生態やメカニズムを明らかにしたのが、前野・ウルド・浩太郎さんなんです。


中央高校で講演する前野さん

解明した1つが「孤独相」「群生相」
簡単に言うと、心優しい緑のバッタが「孤独相」。単独で群れていないということ。
一方で、凶暴になって黒っぽい色になって群れを成しギャングのようになった固体が「群生相」と呼ばれています。

最初は「孤独相」と「群生相」のバッタは別物だと考えられていたのですが、前野博士の研究では、孤独相だったバッタが混み合った環境に置かれると、飛翔力のアップした群生相と呼ばれるモードに変身して、人間にとって破壊的な行為を繰り返しながら移動するんだとか。

変身というのはいきなりサイヤ人に変わるのではなくて、「凶暴モード」の卵を産むということ。
その卵が孵るとサイヤ人が誕生するという生態です。

普通、というか現代の研究者は科学技術が発達しているため、遺伝子研究をはじめ分子生物学的なアプローチで研究する事が多いと思います。だから一般の人が「グアニンが...」「シトシンが...」「チミンが...」と聞いてもちんぷんかんぷん。基礎的なことを知らなければ話の1%もわからないというのが、今の最先端の研究だと思います。

しかし前野先生は違います。
愚直なくらいローテクです。昆虫学者ファーブルのように個体を観察して、ローテクな実験を繰り返して真実をつかむのです。

つまり前野先生の研究は「小学生にも分かる研究」です。
一般の大人でも理解できる研究だから、別世界の私たちが聞いても面白いんです。

前野先生は本も執筆しているのですが、独特の文体で素人にも大変分かりやすく、おまけに面白い文章でサービス精神満点です。こうしたことから研究自体が知らない人にも楽しく伝わっていると思います。

アフリカで日本人としてはもちろん初めて。
たった1人で研究した功績が称えられ、前野さんには現地の最高の敬意を込めた「ウルド」のミドルネームが与えられています

講演を聞き、より前野さんの事を知りたくなった私は、高校までを過ごした自宅を訪れそのルーツを尋ねました。

毎日のように、近所に虫取りに出かけていた小学校の頃。
家族におねだりするのも、ほとんどが昆虫関連のものばかりでした。


夏休みの自由研究で作ったものや擦り切れた図鑑。ルーツを話してくれました

なぜ昆虫が好きになったのかを尋ねると・・・
「多分、自分ちっちゃいころ結構太ってたので、身動き取れずこうじーっと地面で座ってることが多かった。
 そういう時にこの自分がよく見てたのが小さい虫で、見ていると不思議な形してますし、変な動きするので、
 なんでこいつらこんなに色々種類があって、なんでそうやって動いてるのかなあって、凄く疑問に思ったので」
との答え。

子供の頃の夢は「世界的な昆虫学者」。
つまり、あの「ファーブル」のようになることです。

小学校の文集にはこんな言葉が...

小さい頃からの夢が今、形になろうとしています。

「こう夢というのはなかなか人に言うのは恥ずかしい。
 でもそれで例え失敗しても、こう叶わなくても、
 きちんと自分の口から自分は昆虫学者になりたいっていうのを人に言うと、
 結構周りの人達も後押ししてくれたり励ましたりしてくれるので、
 そういうのも自分の力としてこう頑張っていくっていうのを積み重ねてきたからこそ、
 ようやく自分の夢が叶って来たんだなって思ってます」

夢を追う事 夢を見続けること

世界を救うバッタ博士として前野さんは、これからもローテクで研究を続けていきます。

前野ウルド浩太郎さんは京都大学が若手研究者育成のために実施している「白眉プロジェクト」の20人のうちの1人に選ばれ、4月から京都大学の助教として研究を続けています。

5年間、学生への指導や授業をしなくてもOK、研究だけしていればいいという、研究者にとっては非常に恵まれた立場です。バッタが出る時期はまたモーリタニアを訪れて、研究所ではなく、フィールドで研究する。そしてバッタの時期が過ぎると京大でデータをまとめ論文を書いてを繰り返すと思います。

アフリカの飢饉を救うためバッタ研究しているのは先進国では前野さんただ1人。
本当に世界を救う力があると思っています。
秋田から応援させてください。


今回のカメラマンは前野先生の幼馴染。再会を大変よろこんでいました

前野ウルド浩太郎 農学博士のことを知るには田村のブログでは足りません

↓↓も見てください、マジですごさがわかるとどうじに、文章も上手で、とても博士(ハクシ)とは思えないほど普通の兄ちゃんです。
田村が言うのも失礼ですが、飾らない、偉ぶらない、謙虚な、そして面白い昆虫学者だと思っています。
検索して読んで下さいね。

1980年、秋田県生まれ。
飯島中学校・秋田中央高校 卒業
弘前大学農学生命科学部 卒業
神戸大学大学院自然科学研究科 博士課程修了

書籍『孤独なバッタが群れるとき』(東海大学出版会)
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ブログ「砂漠のリアルムシキング」

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