番組審議会リポート|
PROGRAM COUNCIL REPORT
第662回番組審議会が9月25日に開かれました。合評番組は「平和へのミッション ~知ること伝えること~」でした。
委員からは
戦後80年にあたって全国の系列局が掲げた「いまを、戦前にさせない」というテーマが、まず強く印象に残った。B-29の墜落事故から生き残った兵士を救出し、サポートした人たちについての証言からは、敵味方を越えて1人の若者の命が助かったことを喜んでいた、という、暖かい心の交流が現実にあったのだ、ということが感じられた。
戦争についてニュースに取り上げる中で、視聴者から「自分の家にもこんな戦争の遺品がある」といった反響が寄せられ、それを取り上げているパートが印象深かった。80年が経過し、その当時のことを直接聞くことができなくなってきている中で、少しでも手がかりをたどって戦争を自分事としてとらえていることが伝わってきた。テレビを見ていた人たちにとっても、戦争を身近に考えるきっかけとなりうる内容だったのではないか。
生き残ったアメリカ兵が飛び立って行った、能代の飛行場の様子を話した94歳の女性のインタビューが印象深かった。「懐かしいという気持ちにはなりません。そういう時代を生きてただ流されていた。何も言えない虫けらみたいな存在で、情けなかったです。」と言って涙を流していた。戦争の下ではだれもが無力で、よくわからないうちに始まり、負けていたのだろう。もし自分がそこにいても、同じように感じたのかもしれない、と思った。
VTRの間に生放送のスタジオパートが入ることで現実に引き戻され、それまで見てきた内容を自分事として考えることができた。体験したことのない戦争を身近な人を通して追体験するという切り口は、戦争を風化させないという意味でこれからも続けていって欲しい。
「時代に流されるだけで、何も言えず情けなかった」という女性のインタビューは印象的で、それが戦争を防げなかったことにつながったのだろう。そうはさせない、言いたいことを言える状況を作っていくことがメディアの役割なのだ、というメッセージが込められているように感じた。
「いまを、戦前にさせない」というテーマだが、ウクライナやガザのことを考えれば、実は日本が戦闘に巻き込まれていないだけで、世界的には既に戦中・戦時下と言えるだろう。この番組を通じて戦争というものがこの秋田の、自分の身近な場所で現実にあった、自分の先祖が巻き込まれて苦しんでいた、という事実を視聴者が知ることは、少し視点を変えるだけで、世界で今起こっていることに思いをはせるきっかけにもなりうるのではないか。
といった意見が上がりました。
第661回番組審議会が7月22日に開かれました。合評番組は「シン・アキタの夜明け~動き始めた鈴木県政~」でした。
委員からは
テロップの入れ方やBGMに「大いなる秋田」を選曲するなど、細かいところが丁寧に作られた、見やすい番組だった。全体を通じて鈴木県政への期待や希望を持てるに番組だったが、一点気になったのは、田村アナウンサーが前知事の他県の食べ物を悪く言う発言をいじっていた、あの質問は適切だったのだろうか。
今後の施策について人口減少対策と農業振興を語っていたが、マーケティング手法やCO2削減など、根本的な解決策とは正直言い難い話で、もう少し深掘りしてほしかった。ただ、県議会に説明する前に踏み込んだ話はあまりできない旨言われていたという説明が制作担当者からあり、苦労してまとめたのだ、ということが分かった。
新しく誕生した知事が初めて登庁するシーンや、公園で一般市民と触れ合うシーンなど、視聴者にその姿が伝わるいい番組だったと思う。できればこういった番組を毎年作って、その年に発言したこと、何を実行しどう結果が出たのかを検証してもらいたい。その際にはぜひABSアプリなどを利用して、視聴者の意見やアイディアなどを伝えていける双方向の番組にしていってほしい。
重点施策を説明する際に、導入するものについてもう少し説明が欲しかった。人口減少対策で千葉県流山市のケースを参考するとのことだったが、具体的にどういった点を取り入れていくのか?また、農業振興で二酸化炭素削減を収益に結び付けるとのことだったが、だれがそのお金を払ってくれているのか、など、もう少し背景を説明してもらえればより理解が深まったのではないか。
選挙の際自分は秋田県出身者に知事になってもらいたいと思っていたので、少しがっかりしていた。しかし、その後のニュースやこの番組で知事の素顔を知り、今までの知事とは違う取り組みをしていることを知って好感度がアップした。
番組の最後に鈴木知事が選挙の中で訴えていた「持続可能な秋田県」というもののイメージが示されていた。県民一人一人が、幸せに暮らせるという見通しが持てること。これが新知事の目指すところなのだ、ということがわかりやすく示されていたと思う。
ゴミ拾いのボランティア活動や、初登庁で職員と一緒に食堂で食事をとるシーンなどが偶然撮影できていてとてもいい映像が多かったが、わざとらしさを感じさせないためには、これが偶然とれたものであることを明かす、という手法もあったのではないだろうか。
といった意見が上がりました。
第660回番組審議会が6月16日に開かれました。合評番組は「日本のチカラ #421 マリさんのいぶりがっこ ~大好きな味を いつまでも~」でした。
委員からは
この番組の主人公の加藤マリさんは、いぶりがっこ作りだけではなく、スキーのコーチ、ホテル経営、子育て、犬の世話と、何足ものわらじをはいて大変そうなのに、常に笑顔で楽しそうだ。見終わって「頑張ろう」という気持ちになれる、メッセージ性の強い番組だった。
漬物文化が盛んな秋田の中でも、いぶりがっこは全国的な人気商品となっている。しかし、高齢化と食品衛生法の改正で、昔ながらの味を受け継いできた年配の人たちが作りにくくなっている中、若い人がそれを受け継いでくれるというのはありがたいことだと感じた。ただ、「いぶりがっこの伝統を守ろうと奮闘する女性農家の物語」というナレーションあったが、ここに「女性」はいるだろうか。「男性農家」という表現はしないと思うので、そこが少し気になった。
主人公のマリさんも、加藤家の方々もみなさん明るくて、前向きないい番組だった。しかし、現実問題として高齢者の作り手がお金をかけて法律に則った加工所を作ることはできないし、それをマリさんが作ってみんなで使っている、という状況を、どうやって成立させたのかを具体的に示して欲しかった。そうすることで、より、いぶりがっこの伝統は守られていくだろう、ということを確信できたと思う。
多額の投資をして作った作業所を、共同作業所として今まで何十年もいぶりがっこを作ってきたレジェンドのような方たちに使ってもらう、というのは素晴らしいことだと思った。マリさんとお年寄りたちが、できあがったいぶりがっこを試食しながら笑いあうシーンで番組が終わっていたのも良かった。すがすがしさが心に残った。
大根を栽培し、加工し、自ら販売する、といういわゆる6次産業ともいうべきものが見事に成立していた。昨今は後継者がいないことから衰退していく農業産地も多く見られるが、マリさんの事業はそうした現場にとって参考になるものなのではないか。
この番組には、明るく前向きなマリさんの日常の陰に色々な問題が埋め込まれている、と感じた。一例を挙げれば、食品衛生法の改正は果たして妥当なものだったのか、それによって消えていく地域の伝統について政治や行政はどう向き合うのか、という問題もはらんでいる。ひとつの番組で何もかも語りつくすことは難しいかもれないが、そこに収まりきらない疑問が湧いてきた。それがこの番組の持っている深さであり力なのかもしれないが、番組としてまとめていくことの難しさも併せて感じた。
といった意見が上がりました。