番組審議会リポート|
PROGRAM COUNCIL REPORT
第651回番組審議会が7月30日に秋田放送で開かれました。合評番組はテレビ報道番組「守る、いのちと暮らし~秋田 大雨から1年~」でした。
委員からは
水害によって地域の景色が明らかに変わっていった様子がわかりやすく伝わってきた。高齢の女性が「そのまま流れていけばいいかとも思ったけれど、そうもいかないから頑張って生きてきた。」という一言がものすごく切実に感じた。全体として被災した人たちと地域の1年間が丁寧に描かれていて、複数の記者が心を込めて向き合ってきたことが伝わってきた。
人間の力強さを感じさせてくれる番組だと感じた。魅力的な取材対象が多く、その方たちがどう立ち上がって行くかが楽しみだ。彫刻に取り組む男性が被災後に彫っていた仏像が、優しい素晴らしい表情で、象徴的な映像だった。また、田んぼが浸水してしまった人、高額な医療機器を浸水で失いながら、また病院を始めたいと語る医師など、その後どうなっていくのかが気になる人たちが多く、その後が知りたい思った番組だった。
今回の大雨を見ても、自然災害は常態化しているように感じる。このことは、頭ではわかっていてもなかなか具体的には対応できていないもので、こう言う番組が定期的に放送されることで我々の防災意識を深めていく、忘れさせないという意味があるのだと感じた。
秋田市楢山地区では1年たって被害から立ち直っている人と、被害の影響を引きずっている人に極化しているとのことだったが、その理由は何だろう、と思った。自分が東日本大震災で被災した時の経験では、今まで住んでいたところに見切りをつけて新しい生活を始めた人の方が立ち直りが早かった。性格的なものなのか、金銭的なものなのか、その理由が知りたいと感じた。
高額な医療機器を失ってしまった秋田市のクリニックや、田んぼに泥水が入ってしまった五城目町の農業法人などに対して、行政からの支援はあったのだろうか。もしも無い、あるいは不十分だとすればそれはもっとあるべきだ、と提言して欲しいし、あるのならばそれを事実として伝えて欲しい、と感じた。
使えなくなった家財道具を整理していた人が言っていた、「ゴミじゃない」という一言は本当に重かった。生活そのもの、人生そのものをゴミとして処理しなければいけない大変さというのが、災害の恐ろしさであり、その実相を伝えていた、と感じた。
といった意見が上がりました。
第650回番組審議会が6月20日に秋田放送で開かれました。合評番組は開局70周年記念ラジオ番組「花子の、はなみち。」でした。
委員からは
小野花子さん自身の言葉から民謡に対する熱意や、ずっと第一線で活躍されてきた誇りなどが感じられた。また、長いキャリアの中でのその時々の音源もつかわれていて、第一回日本民謡大賞の実際の音源を聞けたことには感動した。
秋田に住む者として民謡歌手・小野花子さんの存在は知っていたのだが、いつも元気なおばちゃん、というイメージの方にもそこに行きつくまでに様々な葛藤があり、それでもあきらめずに歌い続けてきたことが番組を通じてわかった。夢、目標を持つことの大事さを教えられた。
効果音の使い方がうまかった。ザーっという雨の音の後に鳥がさえずると、苦しい時が終わって平穏な日々が訪れた、と感じられたり、神社の祭典でのセミの声から、暑い中、振袖で歌っているという花子さんの大変さなどを想像することができた。
酒井アナウンサーのナレーションがとても聞きやすかった。語り口が素晴らしく、見たこともない川反近くの有楽会館の情景が見えてくるようだった。ただ、その場面で流れていた効果音に、昭和35年代には普及していなかった歩行者の横断を助ける聴覚信号が入っていることに気がついて、違和感があった。
民謡そのものの聞かせ方がうまかった。ここぞというところでは全曲を通しで聞かせるなど、音楽番組といってもいい内容で、民謡になじみのない人にも魅力を伝えられたのではないか。また、エンディングの「サキホコレ音頭」を歌う70代後半の声と、第1回日本民謡大賞を受賞した「秋田船方節」を歌う32歳の時の若々しい声を聴き比べることで、民謡歌手小野花子の人生の歴史を感じることができた。
歌手として活躍する中で、周囲の人からいじめられたり誹謗中傷されるなどのつらいことがあったあと、時代が一気に飛んで名人位になる、その間の葛藤や努力が描かれていないことに唐突感を覚えた。人が信じられないという気持ちから、後進を育てていこうという温かい心になったのはなぜか、何かきっかけがあったのか、そこが知りたい、と感じた。
コンクールで優勝した高校生の初々しい歌と、小野さんの歌を聴き比べると、次元が違うものであることが良く分かった。声や節回しに人生そのものと向き合ってきた厳しさが表れているような気がした。これはもしかしたらラジオならではなのではないか。純粋に声と向き合うことで、内側からにじみ出てくるような輝きを感じることができる番組だった。
といった意見が上がりました。
第649回番組審議会が5月23日に秋田放送で開かれました。合評番組は開局70周年記念番組「テレビ×アプリ×謎解き『わ!の秘密を守れ』」でした。
委員からは
県内のトピックを題材にしたクイズが出され、幅広い世代が楽しく見られる番組だと感じた。 県内の地域バランスも良く考えられていて、細かな地域情報もさりげなく盛り込まれており、うまく作られていた。ただ、問題の中に秋田放送の社屋の外観がヒントとなっているものがあり、秋田市以外の視聴者には難しかったのではないか。
キャスティングが番組をいい雰囲気にしていた。回答者のノンスタイル・井上裕介さんが、進行上の細かなエラーに対して的確にツッコミをいれて、本来であればカットされていた要素が、逆に番組構成上大事なボケになっていた。また、クイズを出題するスギちゃんが、マスクで顔を隠した正体不明の怪人という設定ながらパッと見て誰だかわかる、という巧みなアイコンとなっていて面白かった。
最初に「テレビ×アプリ×謎解き」というタイトルを聞いて何の番組かわからなかった。時代は明らかに変わってきているのだ、ということを実感した。クイズの問題は私にはとても難しくて全然わからなかったが、制作者の説明で比較的優しい問題だ、と聞いて、自分がいかに凝り固まった考えで生きているか、反省させられた。頭の中の、普段使わない部分に血が通っていくような番組だった。
70周年の記念番組として、思い切ったことをよくやったと思う。金曜日のゴールデンタイムに、会社を挙げて取り組んでいることが画面から伝わってきた。若者のテレビ離れ対策として、テレビの放送にスマホアプリを同期させて、番組の進行に合わせてクイズの問題が出されるというのは,よく考えられた仕組みで、未来に向けた素晴らしいチャレンジだった。
井上さんのキャスティングが良かった、という意見があったが、そのコメントやツッコミを導く設定も台本の中にかなり埋まっていた感じがする。井上さんも作り手の意図をよく理解して返していたので、そのコンビネーションが良かった。そうしたやり取りを出演者みんなが面白がっているのが視聴者に伝わってきていた。
一点問題提起として、CMが見てもらえるのかが気にかかった。スマホアプリを使った視聴者参加型のクイズなので、問題が出されてCMに入りCM明けに回答が出る、という流れだと、CMの間も視聴者は一生懸命考えているのではないか。ただ、そう言ったことも含めて、課題や可能性がたくさんある、チャレンジングで楽しめる番組だった。
といった意見が上がりました。