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番組審議会リポート|
PROGRAM COUNCIL REPORT

第664回秋田放送番組審議会リポート

第664回番組審議会が11月12日に開かれました。合評番組は「たどるB29墜落 ~秋田の痕跡 生存兵の足跡~」でした。

審議委員からは
終戦直後に男鹿半島で墜落したB29について、生存兵による事故現場訪問の映像を手掛かりに様々な取材の蓄積が紐づいて、深い内容の番組になっていた。35年前の訪問の様子が動画で残っているというのはインパクトが強いものだと感じた。また、深い山の中にあったB29の残骸を探す際には、ドローンを使って上空から撮影したり、逆に地上で深い藪をかき分け,急な斜面でカメラマンが滑り落ちてしまう映像をそのまま使うことで、探索の大変さが伝わってきた。見ごたえのある番組だった。

アメリカの博物館で撮影したB29の機内の映像は非常に貴重なものだと感じた。特に、生き残った兵士が乗っていた、尾翼近くの席の狭さを見ると、墜落した時にはどれほど怖かっただろうか、その小さな席にたった一人で座り、乗組員の中でただ一人生き残ったことによる心の傷はいかに深いものだったろうか、ということが映像から偲ばれた。

生存兵の家族をアメリカに訪ねた時の映像は、感慨深いものがあった。子、孫、ひ孫、玄孫、皆さんがそろっている映像。男鹿の人たちが生存兵を助けなければ、この家族は誰もいなかったのだ。当時のことを知っている人が元気なうちに、このご家族に男鹿に来てもらい、亡くなった兵士の慰霊碑を見てもらいたいと思った。この番組を通じて昔のことを知ることができたと同時に、男鹿の人たちのやさしさを知ることもできた。

生存兵は事故のことについて多くを語らなかったと家族は言っていた。それは戦争による心の傷が原因だろうということだった。しかし、45年後に男鹿を訪ねて自分を助けてくれた人たちに出会い、亡くなった仲間たちの慰霊碑があったことを知り、そのことを遺族たちに連絡していたという。彼はそのことで救われたのではないか。番組の進行とともに謎が紐解かれていくようで、まるで物語を見ているように感じた。

この番組は、何らかの高い評価を受けていいものだと思う。秋田という、戦争とは直結しないような地域にこういう傷跡が残っていたことを掘り起こし、そこでかつての敵国の兵士が地元の人々の手によって救助されていた、彼が生き残ったことで生れた家族たちにも取材に行き、現場で見つかった残骸をアメリカにある実物と突き合せた、など、今までになかったような情報が満載されている。そしてそれらが、戦争というものはあってはならないのだ、という主張にしっかりと結びついている。こうした様々な点が評価されてほしい、と感じている。
といった意見が上がりました。

第663回秋田放送番組審議会リポート

第663回番組審議会が10月28日に開かれました。合評番組は「ぶらり途中下車の旅 秋田編」でした。

審議委員からは
秋田県内を列車に乗って途中下車しながら旅するというこの番組、旅人に選ばれた落語家の林家たい平さんと地域の人たちとのやりとりが全体を通して温かみがあったな、というのが印象に残っている。

訪れた場所が、田沢湖高原、角館、大曲と、メジャーな観光地だったが、登場する店やクローズアップする見どころや商品が、珍しいものや目新しいものが多かった。こうした全国区のタレントが登場する番組ではおなじみのものが取り上げられることが多いのだが、この番組では秋田の地元に住んでいる人も楽しめる内容となっていた。

旅人のたい平さんは、落語家さんらしくお話にしゃれを交えていたり、言い回しも機転が利いていてすてきだな、と思うところがたくさんあった。角館の駅に降り立ったたい平さんが、「長屋門みたいに風情のある建物がある」とか、タクシー乗り場や交番まで風情がある、など街並みを見て色々な発見をしていた。県外からの観光客はこうした目線で見ているんだな、ということが分かって、秋田の魅力をアピールする上でも参考になった。

全体に温かい雰囲気の番組だと感じた。たい平さんが色々なものを食べるときとてもおいしそうに食べている、感動を伝えるときも心から伝わってくるような感じがして好感が持てた。

自分の地元の場所を多く回ってくれたので、とても楽しく見ることができた。番組の最後に黄色く染まった田んぼの中を1両の列車が走っていく姿が印象的だった。たい平さんという人選もとてもよかったと思う。

この番組は関東方面で放送しているのを何度か見たことがあるが、地元の人も存在は知っていたが入ったことはない、というような店や場所を取り上げていた。今回の番組もそうだが、リサーチはかなり幅広くやったのではないか。視聴者の興味をうまく引っ張り込む、巧みなスポットの選択だった。

秋田のことは知っているつもりになっていたが、地元が持っている魅力は常に更新されている、と感じた。家業を継いだり事業を継承したりして、新しい履物、新しいお菓子、奇抜なお弁当などが生まれている。しかもそれを担っている人たちが、遊び心があって明るく楽しそうなのが印象に残った。そこに、我々の生活を豊かにしたり、奥行きをもたらしたりしてくれる手がかりが感じられる番組だった。
といった意見が上がりました。

第662回秋田放送番組審議会リポート

第662回番組審議会が9月25日に開かれました。合評番組は「平和へのミッション ~知ること伝えること~」でした。

委員からは
戦後80年にあたって全国の系列局が掲げた「いまを、戦前にさせない」というテーマが、まず強く印象に残った。B-29の墜落事故から生き残った兵士を救出し、サポートした人たちについての証言からは、敵味方を越えて1人の若者の命が助かったことを喜んでいた、という、暖かい心の交流が現実にあったのだ、ということが感じられた。

戦争についてニュースに取り上げる中で、視聴者から「自分の家にもこんな戦争の遺品がある」といった反響が寄せられ、それを取り上げているパートが印象深かった。80年が経過し、その当時のことを直接聞くことができなくなってきている中で、少しでも手がかりをたどって戦争を自分事としてとらえていることが伝わってきた。テレビを見ていた人たちにとっても、戦争を身近に考えるきっかけとなりうる内容だったのではないか。

生き残ったアメリカ兵が飛び立って行った、能代の飛行場の様子を話した94歳の女性のインタビューが印象深かった。「懐かしいという気持ちにはなりません。そういう時代を生きてただ流されていた。何も言えない虫けらみたいな存在で、情けなかったです。」と言って涙を流していた。戦争の下ではだれもが無力で、よくわからないうちに始まり、負けていたのだろう。もし自分がそこにいても、同じように感じたのかもしれない、と思った。

VTRの間に生放送のスタジオパートが入ることで現実に引き戻され、それまで見てきた内容を自分事として考えることができた。体験したことのない戦争を身近な人を通して追体験するという切り口は、戦争を風化させないという意味でこれからも続けていって欲しい。

「時代に流されるだけで、何も言えず情けなかった」という女性のインタビューは印象的で、それが戦争を防げなかったことにつながったのだろう。そうはさせない、言いたいことを言える状況を作っていくことがメディアの役割なのだ、というメッセージが込められているように感じた。

「いまを、戦前にさせない」というテーマだが、ウクライナやガザのことを考えれば、実は日本が戦闘に巻き込まれていないだけで、世界的には既に戦中・戦時下と言えるだろう。この番組を通じて戦争というものがこの秋田の、自分の身近な場所で現実にあった、自分の先祖が巻き込まれて苦しんでいた、という事実を視聴者が知ることは、少し視点を変えるだけで、世界で今起こっていることに思いをはせるきっかけにもなりうるのではないか。
といった意見が上がりました。