【グップラ】農業県・秋田で農家の新たな収入源として期待 温室効果ガスの排出削減へ「J-クレジット」とは
日本テレビとその系列局は、今月8日日曜日までを、地球のため、未来のためという視点で考える「グッド・フォー・ザ・プラネット・ウィーク」として、様々なキャンペーンを展開しています。
今年のテーマは、「地球にいいこと、人にいいこと」。
4日は、J‐クレジットという制度についてお伝えします。
■「地球にいいこと、人にいいこと」J-クレジット制度とは?
J‐クレジットは、温室効果ガスの排出削減量や吸収した量を見える化して、売り買いする国の制度で、2013年度に始まりました。
目的はもちろん、地球温暖化を防ぐためです。
省エネ設備や再生可能エネルギーの導入、それに、適切な森林管理など、それぞれの取り組み内容に応じて、クレジットの量が認証されます。
企業は、様々な形で、二酸化炭素など、温室効果ガスの排出削減に取り組んでいます。
それでも、自社の努力だけでは、目標とする削減量を達成できない場合、J‐クレジットを買うことで、温室効果ガスの排出を削減したと見なそうというものです。
一方、実際に温室効果ガスの排出量を削減した側にとって、J‐クレジット制度は新たな収入源となります。
その制度が農業の分野にも広がっています。
農家の新たな収入源につながる取り組みを取材しました。
■J-クレジットを新たな収入源に!農業法人の取り組み
12人の農家でつくる横手市の農業法人、みずほライスです。
今年4月、田植えに向けて、イネの種まきが急ピッチで行われていました。
あきたこまちを始め、4種類を、70ヘクタールに作付けします。
代表を務めるのは、熊谷賢さん。
「コメの価格が上がり、農家にとってうれしい時代がやっと来た」と話す一方、先行きは楽観視できないと話します。
熊谷賢さん
「世界中から日本にコメが入ってきたりとかして、価格が変わったりとかっていうのは、ちょっと怖いのかなと思っているんですけど、我々はそこは関与できないところなので、いいお米をいっぱい作って出すというところで頑張っていこうと思っています」
備蓄米の放出も重なり、日々、変化するコメの価格。
資材費の高騰など、農業を取り巻く環境が厳しさを増す中、熊谷さんがおととし活用を始めたのが、J‐クレジット制度です。
熊谷賢さん
「70ヘクタール今年はやる予定なので、3万5000円×70なので、200万円オーバーぐらい」
温室効果ガスの排出を減らした量を見える化し、売り買いするJ‐クレジット制度。
水を張った田んぼでは、土の中の微生物が活発化し、メタンガスが発生します。
メタンガスは、地球温暖化に与える影響が、二酸化炭素の28倍と言われています。
一方、イネの成育を調整するために、田んぼの水を抜く「中干し」の期間中は、メタンガスが発生しにくい状態となります。
J‐クレジット制度を運営する国は、おととし、温室効果ガスの排出を減らす手法の1つに、田んぼの中干し期間を通常より7日間以上延長することを追加。
早速、取り組んだ熊谷さんは、60ヘクタールの田んぼで約400トンの二酸化炭素に相当する温室効果ガスを削減したと認定され、180万円余りの新たな収入を得ました。
得られる収入は、1ヘクタールあたり約3万円。
作付面積を増やす今年は、220万円を超える見通しです。
これが8年間続きます。
熊谷賢さん
「素直に驚きです。お金が入ってうれしいというよりは、お金が非常に厳しい時代だったので、何かしらで従業員の頑張りに対して報いなければならないところの原資が手に入ったところは、非常にうれしいと思ったところです」
J‐クレジットの認定を行う業者とのやりとりや、中干し期間の記録など、ある程度の手間はかかるものの、多くの農家に参加してほしいと話す熊谷さん。
しかし、身近で取り組んでいる人はいないといいます。
熊谷賢さん
「イメージとしてJ‐クレジットと言った時のとりかかりやすさが難しいのかなと思いますので、それを教えてくれる人、ナビしてくれる人が身近にいて、親切丁寧にやってくれると、手取り足取り、並走しながらやってくれる環境が整っていくといいなと」
■「バイオ炭」で新たな収入を その仕組みとは
一方、大仙市の田んぼでは、別の方法でJ‐クレジットを生み出す取り組みが始まっています。
この日、田んぼに運び込まれたのは、大量の真っ黒な粒。
イネのもみ殻を350度以上の高温で加熱し、炭化させた「バイオ炭」です。
炭素を閉じ込めた状態で農地に埋めることで、本来排出されるはずだった二酸化炭素を削減したとみなされ、J-クレジットの認証を受けることができます。
トロムソ 営業部 高橋司さん
「10アールあたり1トンのバイオ炭を投入して、今のところ相場としては約4万円くらいのJ-クレジットでの取引となっております」
バイオ炭には、イネの成長に必要なカリウムが含まれています。
化学肥料をバイオ炭とたい肥に置き換えることで、肥料代を6割程度、削減できるということです。
さらに、バイオ炭を使ったコメづくりは、環境に配慮した農業に対する国の補助金の交付対象となります。
コメを収穫した後、大量に出るもみ殻。
お金をかけて処分しなければならない産業廃棄物ですが、バイオ炭として活用することで、経費を抑えながら、新たな収入を得られる可能性があります。
高橋さん
「今年度中に、大仙市内にバイオ炭の製造工場を構えて、より多くの農家さんにバイオ炭を使っていただけるように進めていきたいなと考えております」
広大な農地が広がる秋田県。
J‐クレジット制度は、世界規模の課題解決への一歩となるほか、農家のこれまでにない新たな収入源として、ますます注目されそうです。
♢♢♢♢♢
J-クレジットをめぐっては、県内の銀行も販売支援に乗り出すなど、その活用が広がりを見せようとしています。