危険な空き家…秋田市が所有者に解体や撤去の「命令」 状況が改善しなければ年内にも「代執行」へ
秋田市の河辺地区にある、元々、2階建てだった空き家は、2階部分が完全に崩れてしまっているものの、手つかずのまま放置された状態になっています。
市は、先週、所有者に対し、解体や撤去を必ず実施するよう義務づける措置にあたる、「命令」を出しました。
地元の住民からも、速やかな撤去を求める声が上がっていて、市は状況が改善しなければ、年内にも行政側が強制的に作業を始める、「代執行」に踏み切る方針です。
野崎町内会 二木信幸 前会長
「網張ってもらってなんぼかいいような感覚で」
記者
「網なかったら危ねっすな」
二木 前会長
「そうですそうです。業者が来て(網をかける作業)やった時に、地元の人は『ほごしてくれるのか、ほごすのか、解体するのか』って皆喜んでたけど、網張りだけだって。そうするとやっぱり残念がって」
かつては、酒の販売店として繁盛していたという建物。
その頃を知る地元の住民は、店の2階が‟地域の社交場”だったと振り返りました。
野崎町内会 二木信幸 前会長
「景気が良かった時に、飲んだり食ったりする時に、座敷みたいな感じであったんです。できたての頃は私たちも1回来て上って、川風がきて夏はクーラーつかなくても涼しかったからね。良かった。それは景気のいい時の話で」
かつての店の様子を知るのは、町内会長を務めていた二木信幸さんです。
社交場だった2階部分は完全に崩れ、平屋建てのように。
店舗には、住宅も併設されていますが、いずれも長年、手つかずのまま放置され、倒壊する危険性も高まっています。
野崎町内会 二木信幸 前会長
「隣の家の方、台風とかなんか来た時には、トタンが飛んできたり何かするみたいなんですが、それは話を聞いていますので。その時になんとかしてもらえないかと話は聞いたんですが、なかなか」
記者
「手出ししようがない」
二木 前会長
「手出ししようがない。個人の財産なもんだから」
市は、建物全体にネットを張り、最低限の安全対策を講じてきましたが、先週、現在の所有者に対し、解体や撤去を必ず行うよう求める、「命令」措置を出しました。
元々の所有者が9年前に亡くなり、家族が相続の権利を放棄したことから、市は、相続人となった県外在住の甥の男性に対応を求めました。
市は、3年前からこの男性と連絡をとり始め、何度も状況の改善を求めてきました。
しかし、応じることはなかったため、建築や法律の専門家と協議し、強制力を伴う命令措置を出すことを決めました。
「これもほごしてもらって」
記者
「解体したところ」
「これも空き家…これも空き家…これも空き家だ」
市が命令措置を出した空き家がある地区の状況は、深刻です。
「これが今…あぁ完全に崩れたな。木があれだけど…ちょうど仏棚が見えて…」
地元では、こうした空き家が、出没が相次ぐクマの居場所になってしまうのではないかという懸念も広がっています。
約50世帯でつくる町内会のうち、20世帯ほどが空き家になっていて、高齢化と若い世代の流出が、空き家の増加に拍車をかける恐れもあります。
野崎町内会 二木信幸 前会長
「もう10年もすれば私がたの(住んでいる)通りも、私79歳になるから、あそこ全部通り誰もいなくなるんでね」
「我々だって子ども全部ほれ、(地元を)出て行って、新しい家を買って生活するもんだから、あと来ないってことでしょ?なんとこれ…」
秋田市は、今月から、市内全域を対象とした空き家の実態調査を13年ぶりに行います。
約1,000の町内会を対象に行う計画で、沼谷市長は、調査結果をもとに、今後の対応方針を決める考えです。
秋田市 沼谷 市長
「どういう状態のものが、どの程度あるかというところ。こういったものをまず把握をしていきたい。それについて、それらを全て行政が、市が何か手を入れていくのは不可能でありますし、法的にやるべきではありませんので。把握したうえでどういった手が打てるのかはその次になるかと思います」
市は、今回命令措置を出した空き家については、状況が改善しない場合、11月にも、市が解体・撤去して所有者に費用負担を求める「代執行」に踏み切る方針です。