風車の事故 県内ではこれまでに7件発生 原因は?安全対策は?専門家の分析と過去の事例の検証

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秋田 2025.05.16 18:14

秋田県によりますと、風車の事故は、県内ではこれまでにも7件起きていました。

今回の事故を防ぐことはできなかったのか。

専門家による分析、そして、過去の事例をひもときながら検証します。

県内各地に立ち並び、今や景観の一部にもなっている、風力発電の風車。

しかし、今月2日。

進藤拓実 記者
「秋田市新屋です。この時間帯、とても風が強く吹いています。この先に風車があるんですが、プロペラのひとつが完全に折れてしまっています」

事故発生の瞬間を、秋田放送のカメラが捉えていました。

この日、午前8時前に23メートルの最大瞬間風速を観測していた秋田市。

異変が起きたのは、午前10時7分40秒。

1本の羽根が折れたあとも回り続ける風車。

そして、1回転したところで、羽根の一部が落下する様子が見てとれます。

その後、回転は止まりました。

風車を設置した東京のさくら風力によりますと、監視システムが異常な振動を感知したのは、午前10時7分ごろ。

自動停止機能が作動したということです。

その後、通報を受けて駆け付けた消防が、落下した羽根の近くで倒れている81歳の男性を発見し、病院に搬送しましたが、死亡が確認されました。

死因は、体の複数の場所に重篤なけがをしたことによる、多発外傷。

警察は、落下した羽根の一部が男性にぶつかったとみて、調べています。

経済産業省によりますと、落下した羽根に人が巻き込まれた事故は、国内では例がありません。

地元の住民
「海岸の掃除とかもよくボランティアとかであるので、ちょっと危険ですよね、危険でしたよね。簡単にこうやっぱり入れるので」
「もったいないですよね。あそこみんな子どもを連れて行ったりするので」

風車の羽根は、なぜ落下したのか。

風力発電に詳しい九州大学の内田孝紀教授は、羽根が落雷などでダメージを受けていた可能性があると指摘します。

九州大学 内田孝紀 教授
「よっぽどのことがない限り、本来であったらブレード(羽根)が折れるなんてことはあまりないですよ。だから一番、風車の部品の中でも耐久性が強い、高い、ブレードがああいうふうに破断する、風に押されてへし折れるっていうのはですね、 よっぽど何か事故が起きる前に、何かしら問題を抱えていたっていうふうにみるのが自然で」

今回は、羽根が落下する45日前、3月18日に落雷を検知していたことが分かっています。

管理を委託されている日立パワーソリューションズによりますと、「この時は自動停止しなかかったため、現地で対応はしなかった」と説明しています。

その後の点検でも異常は見つからなかったということです。

県によりますと、県内でこれまでに起きた風車の事故は7件。

今回事故があった風車は、15年前にも落雷が原因で羽根が落下する事故が起きていました。

全ての羽根を付け替えて運転を再開したこの風車。

しかし、羽根はまたしても折れてしまいました。

由利本荘市では、2018年に落雷で風車が自動停止しました。

しかし、翌日の目視による点検で、小さな傷を見逃したまま運転を再開し、その2日後に羽根が壊れました。

その時の事故に関する報告書では、ブレード・羽根の損傷を発見できずに風車の運転を再開したことが事故原因と結論付けています。

この事故では、壊れた羽根の一部は半径約100メートルの範囲の6か所に落下しました。

この時は幸いにも、けがをした人はいませんでした。

今回の事故現場で死亡した男性が倒れていたのは、風車から約80メートルの海浜公園の中。

内田教授は、現在は規制が無い風車周辺への立ち入りについて、議論を重ねる必要があると指摘します。

九州大学 内田孝紀 教授
「こういう事故があった直後ですから、やはり心情としては少し立ち入り規制のようなものを一時的にでもやらなきゃいけないのかなという気はやはりします。それをずっとやるのかということは、まだ議論の余地はありますけどもね」

大型化が進み、重大事故へとつながりかねない羽根の落下。

異常が見つかった風車では、速やかに補修作業が行われます。

東京のユーラスエナジーが設置した、由利本荘市の高原にある風車。

この日は、落雷で損傷した表面部分の補修作業が行われていました。

全国の中でも特に落雷が多い秋田。

丁寧でこまめな点検が欠かせません。

事業者の広報 不破剛裕さん
「双眼鏡やドローンを用いて確認する内容もございます。それぞれの点検のプロセスの中で、風力発電所の運転を脅かすものがないかどうかというのをしっかりと確認をしていっているというところです」

しかし、こまめな点検を心がけていても、想定外の事故は起きてしまうといいます。

次世代の電力供給源として大きな期待が寄せられている、再生可能エネルギー。

内田教授は、それぞれの地域の環境に合わせた管理体制が重要だと話します。

九州大学 内田孝紀 教授
「そもそも設置している環境が私たちの生活圏に近いところにある風車に関しては、 山奥に建設されている風車とか、そういうものとはちょっと立地環境が異なるので、もう少し密に、まめに、十分な点検をしていくということが必要になってくるんだとは思いますね」

全国有数の風力発電の先進地・秋田県。

県内経済の発展と同時に、地域住民の安全安心をどう確保していくかが、今、問われています。