時給1,000円台への引き上げが焦点 新たな最低賃金は来週にも示される見通し 人件費のやりくりと人手確保の両立は…飲食店の実情 秋田
時給1,000円台への引き上げが焦点となっている秋田県の新たな最低賃金は、早ければ来週にも最終的な額が示される見通しです。
賃金の引き上げは給料を受け取る側にとっては歓迎すべき動きですが、支払う側にとっては経営に影響を及ぼしかねません。
ここ数年、最低賃金の大幅アップが続く中、人件費のやりくりと人手の確保の両立を強いられる飲食店の実情を取材しました。
秋田駅西口から徒歩5分ほどの場所にある飲食店、「らぁめんらぼ。食堂8080」。
営業は夕方からで、店の名前にもあるラーメンをお目当てに訪れる客のほか、お酒やおつまみを楽しみにやってくる人もいます。
「特別な席」での宴会の需要が高まっていると話すのは、店主の犬塚智さんです。
記者
「団体さんの予約は結構毎日コンスタントに?」
犬塚智さん
「そうですね。2階っていう場所が使いやすいんだと思うんですね。こう言っちゃなんですけど…誰にも見られない」
記者
「それがウリなんですね」
犬塚さん
「そうそう…」
店の2階には、他の客に気兼ねせず語り合える、宴会用の座敷があります。
利用客が増えてきたため、犬塚さんは清掃や席の準備を担うアルバイト従業員の募集を新たに始めました。
店のアルバイト従業員は現在10人。
犬塚さんは妻の協力も得ながら店を切り盛りしていますが、繁忙期にはその倍の人数が欲しいのが本音です。
犬塚さん
「常に3、4人のスタッフ。忙しいときになると(常に)10人くらい欲しかったりするので、そうすると一つのお店に20人くらいはスタッフさんが在籍していてほしいかなとは思ってます」
犬塚さんによると、秋田駅周辺の飲食店の時給は現在の最低賃金=951円を上回る1,000円台で、店も同じ水準の額で従業員を確保しています。
今後最低賃金の額が上がれば、経営への影響は避けられません。
犬塚さん
「材料費が上がったということであれば、販売している商品の値段を上げたりということも今まで過去にもありましたけども、やっぱりここにきて材料費だけでなくて人件費、アルバイトさんたちの給料も上がってくるとなると、さすがにもう売価には反映できなくなってきているので、そのままストレートに経営ひっ迫してくる状況かなと思います」
新たな最低賃金の額を決めるための話し合いの場である審議会は、来週月曜、4回目の会合を開きます。
国の諮問機関が示している秋田県の引き上げ後の目安額は、時給1015円。
この額と同じ水準か、あるいは、さらに上回るかどうかが焦点です。
審議会の議論は、経営者の代表と労働者の代表が話し合いを進めるもので、行政機関は直接的に関与しません。
ただ、県は審議会に対し、全国最低の額になることは避けたいとの意向を伝えたほか、鈴木知事も大幅な引き上げへの期待感を表明しています。
秋田地方最低賃金審議会 臼木智昭会長
「知事がメッセージを発したり、担当部局の方から私に強い要望というか申し入れはありましたけれども…こういう言い方が適切かどうかわかりませんけども…秋田県の場合“領空侵犯”してまで介入してくるような、そういうスタンスで私は受け止めておりません」「考慮しながらも、審議会の成り立ち、建付けからいきますと労使のお考えを中心にということになるんだろうと」
時給を上げることの重要性は経営者側も十分に理解しています。
ただ、ここ数年の、かつてないペースでの大幅な賃金引き上げには、経営努力だけでは追いつけないのが実情です。
犬塚さん
「何かこう…人を使わなくても機械を導入してできる補助金ですとか、そういったものがあるのは存じ上げてますけども、やっぱりその導入する機械とかそういったものを使うのも人になってしまうので、もう少し県とか市とか国の方でも色々考えて、何か支援をしてくださるとありがたいなと思っております」
最低賃金をめぐる議論は全国でも進んでいますが、審議会は、秋田県と金額が近い県でどのような結論が出るかも考慮するとみられます。
ただ、そうした県では例年よりも議論が長期化していて、秋田でも来週の会合では結論が出ない可能性もあります。