【特集】民謡王国・秋田の危機 担い手の減少にどう立ち向かう?体験教室を開く女性の思い「民謡って楽しい」

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秋田 2025.06.25 17:54

全国に誇れる民謡王国・秋田。

それでも、担い手は、年々減り続けています。

こうした中、16年ぶりに民謡の体験教室を開き、その魅力と楽しさを多くの人に伝えようと活動する女性の姿を追いました。

■内閣総理大臣賞も受賞 民謡歌手の挑戦に密着

準備から、ピンチの予感がしました。

CDの音が出ません。

「その辺のスイッチ」
「あ、これ…スイッチ?」
「あ、電源入ってる?」
「あ、これ」
「そう、そこ、CDとかMDとか。あとメインってとこ上げれば…」
「本当だ」

藤原美幸さん
「ステージに立ったら『はい、歌ってください』って言われる立場だと、こうやって来ると何をするんだろうみたいな感じ」

秋田を代表する民謡歌手のひとり、藤原美幸さん。

この日、誰でも無料で参加できる民謡体験教室を企画しました。

ディレクター
「先生、事前に受け付けって言うのはどのぐらい?」
藤原さん
「ちょろいですね。正直昨日までゼロだったんです。昨日までゼロで『えー、これヤバい』って思って。誰もいなかったら、生徒たちが座る」
ディレクター
「分かりました」
藤原さん
「でも人が来たら、もう生徒たちは立って一緒に…」

県内すべての民謡全国大会を制覇しているほか、22歳の時には「日本郷土民謡協会全国大会」でも優勝し、内閣総理大臣賞を受賞した、藤原さん。

2009年に、自身の民謡教室を立ち上げました。

その時以来となる、人生2度目の体験教室を開こうとしているのは、ある危機感からです。

藤原さん
「16年前かな…教室を立ち上げて、体験教室をした時に、教室に30人以上、本当に学校の1クラスぐらいいたぐらいにぎわった時があって、でもやっぱりみんなが中学校になって、部活やって辞めますとかなって、そのあとにどうしても受け入れる態勢をしてこなったので、ましてコロナ禍があったので、こうやって集まることができなかったので、またこうやってちょっと触れてもらって、民謡って楽しいって思ってもらってから教室に入ってもらえる子がいたらいいなと思って」

民謡王国と言われる秋田ですが、担い手はこの30年で8割以上減ってしまったといいます。

保育士
「いいです。もうバッチリだと思います」
藤原さん
「子どもたち、どのぐらいいるんですか?」
保育士
「子供たちは、今の時点では162名います。年々少子化って言う風には言われてるんですけれども、園内はそんなことを感じさせないぐらい。とってもにぎやかです」
藤原さん
「じゃあその子供たちがみんな民謡をやってくれればいいなって思うんですけど」
保育士
「そうですね。ぜひこれで興味を持ってもらえればね」
藤原さん
「持ってもらえればいいなと」

たくさんの習い事が世の中にあふれる中、民謡は選択肢に入るのか。

いざ動いてみると、期待と不安が入り混じりました。

■子どもたちの反応は?体験教室で伝えたかったこと

会場に1人、また1人集まり始めます。

参加者は、大人・子ども合わせて約40人にのぼりました。

藤原さん、まずはその声量を披露します。

会場いっぱいに響き渡る声で、子どもたちの心をつかみました。

初めて体験教室を開いた時と同じく、遊びを取り入れながら。

16年前と違うのは、教え子たちがいることです。

全国大会でも活躍する高校生や小中学生が、頼もしい仲間として教室を盛り上げてくれました。

「そこでストップの時にボールを持っている人が『爆弾持っちゃった』なので、ドンドンパンパンを歌ってもらいます」

ふるさとの唄に、少しでも興味を持ってもらいたい。

この日改めて感じたのは、民謡の面白さです。

藤原さん
「やる前は、こうやってほしくてやってほしくて、民謡をもっとやってほしいっていうのがすごいあったんですけど、みなさん本当に楽しそうにしてくださっていたので、そこから好きになって、段階を踏んでからでも、すごくいいなって感じました」

藤原さんは、唄の輪のさらなる広がりを目指します。