【特集】記録的大雨から間もなく2年 亡き夫との夢を追う女性と支える相談員の思い 秋田市
秋田市を襲った記録的な大雨から、間もなく2年です。
広く冠水した楢山地区では、社会福祉協議会などによる支援活動が、今も続いています。
支援活動がきっかけで、今年、新たな一歩を踏み出した人もいます。
被災者によって抱える悩みは様々です。
少しでも前を向いてもらいたいと続く、支援の取り組みを追いました。
秋田市の楢山地区で開かれている「お茶っこサロン」です。
秋田市社会福祉協議会の地域支え合いセンターが毎週開いていて、11日は防災について話し合うイベントが開かれました。
防災士 千葉菜津樹さん
「でも来週雨の予報出てますよ、さぁ、みんな今決められないことをいつ決めますか」
おととしの記録的な大雨がきっかけで生まれた、地域のつながり。
不安や悩みを気軽に共有することができる、貴重な場です。
このサロンの開催とともに地域支え合いセンターが行ってきたのが、被災した住宅への訪問活動です。
関明子さん
「こんにちはー、秋田市社会福祉協議会と申します」
水害にあった地域に寄り添い続けてきた、相談員の関明子さん。
困りごとや体調の変化はないか。
一軒一軒、訪ねる日々が続きました。
関明子さん
「訪問1回2回じゃ本音が聞けないっていう場合もあるので、まめに訪問しながら、その人たちの本当の部分のニーズを聞き取りながら、できる限りそれに沿えるような支援をしていきたいって我々考えていますね」
こうした地道な活動は、着実に実を結んでいます。
水害に遭った自宅を改装し、今年5月にオープンした、朝食とランチのお店です。
店長の田口和子さん75歳。
おととしの水害のあと、夫が病に倒れ、亡くなりました。
田口和子さん
「一人になった以上、やらなければいけないだろうなと。主人も励まして、やるようにって気持ちで、あちらの世から言ってるんじゃないかって気持ちだけでやってきましたけれども」
夫との長年の夢だった、飲食店のオープン。
大雨による被害、そして夫の死によって一度はあきらめかけましたが、再び前を向かせてくれたのが、関さんでした。
田口和子さん
「1人の女性、関さんという方なんですけども、毎回来てくださる中で私の思いを話しましたところ、それじゃあたった一度の人生、やりましょうよって言ってくれて」
「同じ気持ちで言ってくれたんだなっていうので、背中を押されたというのが、心を動かされたっていう、関さんの温かい心でしょうか」
いつも自分の料理を喜んで食べてくれた夫。
その笑顔を思い出しながら、栄養バランスに心を配ったメニューを提供しています。
地域が抱える課題の解決に向け、様々な活動を行っている、秋田市社会福祉協議会。
9日に開いた研修会のテーマは「地域のつながり」です。
一歩を踏み出した田口さん。
そっと最後の一押しをしてくれた関さんと、今の思いを語りました。
関さん
「オープンされてまだ数か月というところで、思いのたけ、お伝えしたいことがあれば」
田口さん
「少しずつ輪が広がっているように、私の中ではうれしく感じております。これがまさしく私が願っていたお店のあり方かなと今思っております」
関さん
「今はお客様から『おいしいね、おいしいね』って愛されていると思います」
田口さん
「もうその言葉が、主人が言っているように聞こえるので、このお店を始めた意味がこれで果たせたなと、私の中では、自分の天職としてこの仕事を命が尽きるまでやっていければ本望です。ありがたいことです」
記録的な大雨から間もなく2年。
支援の取り組みは、これからも続きます。