【特集】コメの確保に苦戦…取引価格高騰も収量減 生産者の現状は コメの集荷を巡る動きを追う 秋田・横手市
横手市では、7月の高温や水不足の影響で、収穫量が減る見通しの田んぼも出ています。
生産者の状況、そしてコメの確保を巡る商社などの動きを取材しました。
■集荷を巡る競争…「コメを売ってほしい」という相談は去年の約4倍
去年、約260トンのコメを出荷した横手市の農業法人、みずほライス。
コメを売って欲しいという相談が、去年の約4倍、寄せられているといいます。
宮城県の業者
「基本的にはトラック1台が最低条件というところです」
みずほライス・熊谷賢代表
「コメの量としては?」
宮城県の業者
「12トンです」
みずほライスの代表、熊谷賢さん。
今年は収穫したすべてのコメをJA以外に販売することにしています。
販売価格の基準としているのがJAの概算金。
コメをJAに出荷した場合、生産者が受け取る金額の目安となります。
みずほライス代表・熊谷賢さん
「大体相場が農協概算金プラス15%±5%みたいな感じの動き方に見えています」
集荷を巡る競争により取り引き価格は高騰。
卸売り業者もコメの確保に苦戦しています。
みずほライス代表・熊谷賢さん
「今年はいっぱいかかってきますね。連絡が人伝みたいな感じだったり、外食さんもそうですし、卸さんそうですし、問い合わせが多いので我々としてちょっと悩むところはあるんですね」
かつてないほどの引き合いの一方で懸念も。
■記録的な高温と水不足により期待できない収量 それでも少しでも多く…
県内は7月から8月初旬にかけて記録的な高温と水不足に見舞われました。
農薬を空中から散布している人はその深刻な状況を目の当たりにしていました。
ドローン業者
「イネってわからなかったすね。そんくらいもう枯れちゃっていましたね。」
深くひび割れた土。
熊谷さんの田んぼでも一部のイネが枯れてしまいました。
みずほライス代表・熊谷賢さん
「この辺一帯があんまり育たなかったエリア。向こう側の田んぼとそもそも色が違う。となりの田んぼあっちは(イネが)頭を垂れているわけすね。向こうは水口と言って水が入ってくるんですね。こっちは水尻といって水が出ていく。お尻染み込んでここまで届かない水が無かったから除草剤が効かなかったので草も多い。(イネの)草丈が小さい」
草丈が低く穂も青いままのイネ。
みずほライス代表・熊谷賢さん
「実が入っていない。不稔といって、殻だけが出来ている」
実がなったとしても収量は期待できないといいます。
みずほライス代表・熊谷賢さん
「コメの粒がちっちゃいので同じ面積を刈ったとしてもとれるコメの量がかなり減るんですね。1割とか2割とか」
それでも、少しでも多くのコメを収穫したい。
手間はかかりますが、熊谷さんは生育が順調なエリアと遅れているエリアで稲刈りを2回に分けて行うことにしています。
自然が相手のコメづくり。
■“売った買った”だけじゃない、生産者と商社の関係
商社の担当者
「お世話になっております」
この日、熊谷さんの元を訪れたのは東京にある大手商社の営業マンです。
商社の担当者
「なんか今、回ってきたら雑草が生えている所がうちの(契約している)田んぼじゃないかなと心配してるんですけど」
みずほライス代表・熊谷賢さん
「雑草が生えているのがうちの田んぼです。ダハハ」
生産者からコメを仕入れ、スーパーや外食産業などに供給している商社。
一定量のコメの確保が必要不可欠です。
大手商社の担当者
「関東の方は豊作気味な印象なんですよ。ただね茨城、千葉のお米の価格はえらいことになっているのであれが続くのか続かないのか」
生産者にとっては収入アップとなる一方、商社にとっては経営のリスクにつながりかねないコメ価格の高騰。
みずほライス代表・熊谷賢さん
「値段っていつぐらいに決めます?決まります?」
商社の担当者
「収量が見えてからかなと正直思ってるんです。去年も引き続きなんですけど、我々ただ作ってくださいというだけでなく、チャレンジングなことをしつつの話なので、収量が見えてきてから一緒に決めたいと思っています。」
熊谷さんと取り引きを始めてから6年。
コメを確保するために商社が力を入れてきたのが生産者との関係づくりです。
ドローンを使った種まきや田んぼに水を張らない栽培方法など、負担を減らして収入を確保する取り組みを共同で進めてきました。
商社の担当者
「現場の省力化みたいなところに一番フォーカスして、持続可能になればいいなと思っていますので、売った買っただけじゃなくて、そういうお付き合いを引き続きお願いできれば」
地域の農業を守りながらコメを安定的に供給するために。
そして価格が一つの基準となる消費者にとってよりよい方策とは。
それぞれの模索が続きます。