【特集】剣道を究める76歳 最高峰の「範士」八段に 指導者としての思いを教え子の藤田裕太郎アナウンサーが取材
剣道の最高段位は「八段」ですが、この八段の中からさらに技術や品格はもちろん、「指導力」が評価されて与えられる「範士」という称号があります。
先日、秋田市の道場で指導にあたる男性がこの「範士」の審査に合格し、剣道の最高峰「範士」八段となりました。
剣士として、指導者としての今の思いを、この道場出身、藤田裕太郎アナウンサーが取材しました。
秋田市下新城の剣道場、秋水館鎌田道場。
藤田裕太郎アナウンサー
「いまから20年以上前、毎日のようにこの道場で稽古をしていました。大人になった今でも、ここに来るとちょっと身が引き締まる思いですね。では、先生にごあいさつに伺いましょう。鎌田先生!ご無沙汰してます!」
剣道の最高峰「範士」の称号を受けた、鎌田耕平さん76歳。
藤田アナ
「本当にこの度は、範士八段おめでとうございます。率直に今、お気持ちはいかがですか?」
鎌田さん
「あの…大変名誉なことなんですけども、肩に重りがどっしり乗っかったような、責任感を今すごく感じています」
剣道歴は67年に及ぶ鎌田さん。
秋田商業高校から日本体育大学に進み、卒業後は、東京や県内の小中学校で教べんをとりながら、剣道の指導にあたってきました。
自らの鍛錬も重ね、2007年の秋田わか杉国体では、成年男子チームの「大将兼監督」として、優勝に貢献しました。
秋水館を開館したのは、2001年のこと。
ほかのスポ少や道場に通う剣士でも、誰でも自由に来館し、稽古ができる「新しいシステムの道場」を掲げ、これまで多くの剣士を育ててきました。
剣道の最高段位、八段。
合格率は、例年1%を下回っています。
その八段の中でも最高峰にあたるのが、「範士」八段です。
全国に193人いる範士八段のうち、県内では鎌田さんを含めてわずか3人のみ。
今回、鎌田さんが範士の審査に合格したのは、実績と優れた指導力によるものでした。
大会まで1週間を切った日。
鎌田さん
「あなたたちが試合に臨むにあたって必要なことはなんだか、何があるのか、考えて教えてください」
子どもたちに自ら考える時間を与え、剣道に対する意欲を引き出します。
道場生
「前日の生活リズムを正して、本番で全力を発揮できる状態にすること」
鎌田さん
「そうだな。それがひとつだな。ほかに。3つぐらいはあげてほしいんだな… はい」
道場生
「気持ちだと思います」
鎌田さん
「心をしっかりと落ち着かせることなんです。試合に向けて落ち着かせて、そして『よし頑張ろう!』と高めていくことだな」
鎌田さんの稽古の特徴は、動き続けること。
鎌田さん
「打ちが軽いよ、まだ!打ちを強く!もっと声を上だよー!声上!」
藤田アナ
「私も小学生時代、こういう動き続ける、休まない練習をたくさんしていたんですが、鎌田先生、練習法は変わらないですね。こうやって頑張り続けることによって、試合で本当に苦しい時に力を発揮できるんですよ」
道場の開館から今年で25年。
ここで鎌田さんは、子どもたちの将来を見据えたいわば「土台作り」に丁寧に取り組んできました。
巣立っていった選手の中には、高校や大学、社会人になってから全国の頂点に立った選手もいます。
道場生
「少し厳しかったりとかはするけど、優しい先生」
「僕も範士八段になりたいと思いました」
藤田アナ
「そのためにどういうところを頑張らないといけないかな?」
道場生
「普段言われていることをしっかりして頑張ります」
秋水館 鎌田耕平 範士八段
「強い選手を育てるのはもちろんだけども、将来にわたって長く剣道を続ける、そういう人になってもらいたいということで、基礎、基本を大切にしてやってきています」
「範士に限らず、指導するということは、自分ができなきゃいけない。できるためには常に自分が練習をしなきゃいけない。そういうのが、さらに強く思うようになったので、頑張っていきたいなと思っています」
歳を重ねても、努力を惜しまず、ついにたどり着いた最高峰。
それでも、剣と心を鍛える鎌田さんの道は、この先も続きます。