【戦後80年】終戦直後に墜落したB29の痕跡を探す探検家 巨大な機体の一部を新たに発見 忘れ去られかけていた歴史に光を
日本テレビ系列各局の「いまを、戦前にさせない」をテーマにした特集、担当の太田朋孝記者が伝えます。
【太田朋孝 記者】
こちらは、終戦直後に男鹿市の本山に墜落した、アメリカの爆撃機・B29の機体の一部です。
飛行速度を測る機器やアンテナ装置の一部、それにエンジン付近に取り付けられていた部品など、様々あります。
いずれも、秋田市の探検家・髙橋大輔さんが、墜落から80年近い時を経て見つけ出したものです。
さらに、髙橋さんは、先月、大人の背丈ほどの巨大な機体の一部も新たに発見しました。
忘れ去られかけていた歴史に光を当てる、貴重な戦争の痕跡です。
■B29墜落から80年 貴重な痕跡を次々に発見
男鹿国定公園の一部、標高715メートルの本山。
秋田市の探検家・髙橋大輔さんは、アメリカの爆撃機・B29の機体の一部を、2019年から探しています。
髙橋大輔さん
「上空から墜落した時の衝撃で、大きい機体の一部がですね、どーんとどこかに飛んで、それだけが違うところにあるっていう可能性も十分あるのかなというふうに思います」
探索は、国や県、それに男鹿市の許可を得て行っています。
B29が墜落したのは、終戦直後の1945年8月28日。
捕虜に物資を届けるために男鹿の上空を飛んでいたところ、本山に衝突し、機体がバラバラになりました。
墜落から間もなく80年。
髙橋さんは、これまでの探索で、現場に残っていた、飛行速度を測る機器やアンテナ装置の一部、それに、エンジン付近に取り付けられていた部品などを見つけてきました。
手つかずの自然が行く手を阻む、墜落現場の周辺。
道なき道を進んだ先で、髙橋さんが立ち止まりました。
髙橋大輔さん
「ふーと降りてきて。パッと振り返ったんですよね。あそこにありました、あれ」
記者
「どこ?この斜面?」
髙橋さん
「木の根元。まずあれですね、ひとつね」
見つかったのは、着陸装置の一部です。
髙橋さん
「うわ。重くて全然動かない」
「やっぱり“モノ”が見つかるというのは、圧倒的な力がありますよね」
「いろいろな意味で歴史をしっかりと示してくれますし。それはこの物そのものだけじゃなくて、書かれた文献とか資料とかその辺ともつなぎ合わせてくれるという。非常に大きい存在ですよね」
発見は、それだけにとどまりませんでした。
髙橋さん
「ここまで来て、上を見たらふっとあれが見えたんですよ。ついにやった。って分かります。もうちょっと登って行ってみますか」
傾斜が37度もある、険しい坂。
たどり着くことも、一筋縄ではいきません。
見つかったのは、より大きな着陸装置の一部です。
風化している部分もあるものの、しっかりと形が残っています。
■米兵の救出劇と地域住民の思い 忘れ去られかけていた歴史に光
機体の残骸に秘められた、B29の墜落をめぐる歴史。
墜落では、乗っていた12人のうち11人が死亡しました。
ただ一人、少年兵のノーマン・H・マーチンさん当時19歳が、加茂青砂の住民たちに助け出されています。
当時の住民
「殺してしまえとか、うん、なんとかっていうようなね、話もされてあったと。まぁ当時のね、国民感情からすれば、そういう考えがあっても、あながち不思議でもないしね、なんだけども」
菅原繁喜 相談役
「人間だものよ、戦争はどうのこうのっていう問題でないと思うんだな」
大友捷昭さん
「まさかなんぼ敵であったって死にそうな人な、かわいそうで、やっぱり助けるのがやっぱり人間でないかな」
終戦からわずか2週間足らず。
戦後の混乱が続く中での救出でした。
墜落から45年の時を経て、改めて男鹿を訪れたマーチンさん。
マーチンさん
「とてもとてもうれしいです」
「日本もアメリカも戦争をせず、世界の平和が続くように一緒に歩み続けなければならない」
当時を知る人が減りゆく中、B29の墜落が確かにあったことを伝える、貴重な痕跡。
髙橋さん
「184センチ。大人サイズと思っていましたけど、大人サイズの中でも大きいですね」
「戦争の遺産というのがまだ80年を超えても埋もれているんだという現実を皆さんに知ってもらうことで、戦争っていうのは遠い過去の話なんですけど、山にはこうやって、“モノ”が存在していて、やっぱり語りかけてくるんだなと。そういうことを感じましたね」
髙橋さんは、B29に乗っていたアメリカ兵の慰霊碑に、機体の一部の発見を報告しました。
報告したい相手がもう一人。
探索の依頼者、男鹿市でジオパークガイドをしていた、夏井興一さん85歳です。
髙橋さん
「まさにこれですね」
男鹿市民でさえも知らない人が多くなってしまっていたという、B29の墜落。
夏井興一さん85歳です。
「はっきりと、そういうものが見つかったということですから。疑いのないことで、私たちはここから、まさに終わりの始まりみたいなもので。いろいろと運動、さらに詳しく調べて、さらにそれを、一つの市民の人がたに、こういうことあったということを知らせていければと思いますね」
長く山の中に眠り続けてきた、貴重な戦争の痕跡。
当時の出来事をより深く知ることができる、大きな足がかりです。
忘れ去られかけていた歴史に改めて、光が当てられました。
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髙橋さんは、B29の一部の発見をもとに、先週、アメリカに渡りました。
今も機体の全貌を確認することができるB29や、その内部を見て回り、墜落の実像に迫っています。
唯一の生存者、マーチンさんの家族のもとも訪れて、話を聞いた髙橋さん。
知られざる史実を次々と明らかにし、戦争の記憶の継承も目の当たりにしてきました。
同行取材した髙橋さんのアメリカ訪問の特集は、後日、シリーズでお伝えします。
放送は、8月上旬の予定です。