【特集】人里に押し寄せるクマ 息絶えたクマの周辺に散乱していたのは殺虫剤…クマが小屋に入り込んだ大館市のある集落の事例 秋田
続いては出没が相次いでいるクマについてです。
鹿角市で7月に撮影された小屋は、クマが入口を破壊して、保管していた米ぬかを食い荒らしました。
今年はこのように倉庫や車庫にクマが入り込んで保管中のコメなどがねらわれるケースが多発しています。
人里への頻繁な出没とそこで食べ物を得られたという経験がクマの行動をさらに活発化、エスカレートさせ、人身被害にもつながりかねません。
高い学習能力を持つとされるクマが小屋に入り込んだ大館市のある集落の事例を取材しました。
■センサーカメラが捉えた1頭のクマ
大館市役所から北西に約8キロの場所にある山田地区。
集落ではクマの出没や農作物が食い荒らされる被害が相次いでいます。
赤坂実さん
「ここに監視カメラを付けてあったんですよ」
記者
「向きはどっちですか?」
赤坂実さん
「ここを照らしてました。これから下りてくるかなと思って」
去年まで地区の自治会長を務めていた赤坂実さん。
先月22日、赤坂さんが設置したセンサーカメラが1頭のクマを捉えました。
撮影されたのは午前2時半ごろ。
近くの畑では栽培していたトウモロコシがクマに食い散らかされたあとが残っていました。
赤坂さん
「まさにこういう状態で戸を閉めるのをその夜忘れてこの状態だったんです」
クマが撮影された自宅裏の畑にある倉庫も荒らされました。
■息絶えたクマ…周辺には殺虫剤の袋が散乱
赤坂さんは中に置いてあったはずの農薬の殺虫剤、3袋がなくなっていることに気がつきます。
赤坂さん
「ここに(農薬が)散らばっていたんです一か所二か所」
記者
「獣道みたいになっていますね」
赤坂さん
「そうそう」
赤坂さん
「(クマに)盗まれた農薬がどこに行っているのかなということでその道を登って行ったんです。そうしたら熊が横たわってたと。ところが死んでいるものか、体が弱って休んで人が行くとやつら急に立ち上がって襲うので、ちょっとそばへ寄れなかった。もうこれはもう俺の手には負えないということで110番した」
倉庫から50メートルほど離れた場所でクマはすでに息絶えていました。
その周辺にはクマが口にしたとみられる殺虫剤の袋が散乱していました。
今年の夏、畑で育てていたトウモロコシはクマの食害で壊滅状態になったという赤坂さん。
クマの学習能力の高さを肌身をもって感じています。
赤坂さん
「実はこの辺の畑をしている人たちはほとんどクマの被害にあっているんですよ、大なり小なり」「クマは人が住んでいるところにはエサがあるというのは学習したんですな。もう何回でも来ます!無くなるまで!」
エサを求めて人里に現れるクマ。
赤坂さんは人口減少や高齢化によって野生動物を押しとどめるヒトの力が弱まっていると強く感じています。
赤坂さん
「こういうじいさんばあさんが楽しみにしている家庭菜園を諦めて畑を放棄すると」「いずれ雑草が生えて自然動物園になるんですよ」「空き家が増える・畑作らない、住んでるところに山が近づいてくるこういう動物がはびこる」「もう大変な事態になる危機感というか危惧を持っていまして」「なんというか、ただ単に動物を防ぐというだけではなくて村で生活するための範囲がだんだん狭くなってくるというのを感じています」
■今年のクマの傾向 私たちがするべき対策とは?
今年は特に家庭菜園の被害と倉庫・車庫などへの侵入が多くなっています。
県自然保護課などによりますと、家庭菜園ではこれまでクマが口をつけてこなかったというきゅうりやトマト、カボチャといった作物で被害が確認されています。
また、倉庫や車庫にクマが入り込んで保管しているコメなどが荒らされるケースが多発しています。
今年6月には五城目町でクマと鉢合わせた男性が襲われけがをしました。
行動がエスカレートする背景には本来クマが持っている警戒心や習性を人間側の不注意や要因で崩してしまったものが見受けられます。
事故防止の第一歩はクマの生態を理解することです。
今年はブナの大凶作が予想されていて、これから先、エサ不足によってクマの出没がさらに増加することが懸念されています。
クマを集落に引き寄せる可能性がある果樹や農作物、生ごみの管理を徹底すること、場合によっては電気柵の設置や作物の撤去も必要かもしれません。
鳥獣保護管理法が改正され、1日から市町村の判断で緊急的に銃の使用が可能となりましたが、まずは身近な対策が必要です。