【特集】秋田民謡の魅力を世界へ 英語で歌う15歳高校1年生の挑戦に密着
まだコロナ禍前の水準には届いていませんが、クルーズ船を利用した観光客など、海外から秋田県内を訪れる人が、ここ数年、増加傾向です。
そんな海外から訪れた人に秋田民謡の魅力を知ってもらおうと活動する高校生がいます。
英語での民謡歌唱に取り組む姿を追いました。
■英語で民謡を歌いたい 15歳民謡女子の思い
秋田市の土崎地区で行われている、民謡教室です。
指導しているのは、秋田を代表する民謡歌手の1人、藤原美幸さん。
教え子たちは、全国の舞台で次々と活躍しています。
高校1年生の石川空青(そお)さんも、その1人。
「沖の鴎に~父(とと)さん聞けばよ~♪」
藤原さん
「おしておして、節もちゃんと下からいって。2番目は軽やかに英語で」
石川さん
「はい」
「I ask the seagull which on the sea~Please tell me about my dad~♪」
歌っているのは、「秋田港の唄」の英語版。
石川さんは2年前から、英語での歌唱にも取り組んでいるんです。
藤原さん
「外国語でも民謡って歌えないかなと思って、最初中学校の先生に訳してもらって」
ディレクター
「一番初めはもう自分で歌われるつもりだった?」
藤原さん
「はい。なんですけども、『あば』とか『おど』とか秋田弁になって歌えなくって…。そうやっているうちに、やっぱり若い子たちは興味を示して、『うわー、やってみたい』みたいな感じになって、やってくれています」
ディレクター
「どうして自分で英語で歌うことが好きになった?」
石川さん
「今、民謡の若者の人口がすごい減っているので、もう若者が増えないんだったら外国人の民謡を歌う人増やせばいいんじゃないかなみたいな。そういうところでモチベーションにつながっています」
■歌うことが大好き!民謡の節にのせた替え歌も…家族爆笑
石川さんが民謡を始めたのは、5歳の時。
その後、全国大会でも優勝するなど、着実に力をつけてきました。
その秘訣は、とにかく、なんでも歌うこと。
「お父さんのうた、歌ってみ」
石川さん
「あ~陽一~髪切り~似合ってない~♪陽一~脇役なのに~♪」
ディレクター
「いつもこんな感じなんですか」
弟・新大くん
「めちゃくちゃふざけて歌う」
「眉毛も整えてきたんだよ?」
石川さん
「いやでも結構~海苔みたい~♪海苔の養殖場~♪」
「眉毛?」
中でも、民謡の節にのせた替え歌が、大のお気に入り。
1日にひとつは、新曲が生まれると言います。
唄に込めたストーリーを伝えたい。
でも、海外に住む人にその思いは伝わるのか、悩みもありました。
■民謡に込めた思いは伝わるのか…石川さんの挑戦
石川さんが通うのは、聖霊学園高校の「国際コース」です。
世界で活躍する人材の育成を目指しています。
秋田民謡の魅力を世界に発信したいと考えている石川さん。
でも、まだ実際に外国人の感想を聞いたことがありません。
意味は正しく伝わっているのか。
担任を務める、講師のサンチェスさんを頼りました。
サンチェスさん
「私はあなたの歌声を聴いたことがないから、歌ってくれたらうれしい」
「I ask the seagull which on the sea~♪」
海で父を亡くした若者が出稼ぎで漁に行き、父親のことを沖のカモメに聞いたという、ちょっと切ない唄。
サンチェスさん
「悲しいわ。歌詞を読んでいるだけでもあなたの言う通り悲しいけど、歌っているのを聴いたらもっと悲しい気持ちになった。いい曲ね。気に入ったわ」
ニュアンスは、しっかり伝わっていたようです。
サンチェスさん
「flyingでしょ。uponの方がいいかな。on the seaよりupon」
伝統芸能を表現するとともに、グローバルな視野も併せ持つ、新世代。
大切にしているイベントがあります。
向かったのは、秋田港。
クルーズ船の見送りで、秋田民謡を披露しています。
県内には今年度、過去最多となる37回、クルーズ船が寄港する予定です。
秋田を売り込むには、絶好のチャンスです。
「さぁ、ここ土崎の地元の民謡から、秋田の港の歌を、皆様方にはお楽しみをいただきたいと思います」
「I ask the seagull flying upon the sea~Please tell me about my dad~♪」
早速、新しい歌詞を試した石川さん。
いつか、海の向こうで歌う日を、夢見ています。
石川さん
「英語で歌うだけじゃなくて、もうちょっとしゃべれるようになったら、英語での説明とか、(唄が)出来た背景とかも言えたら、もっと民謡を身近に感じてもらえるのかなと思います」