コメの価格が注目される中…安定供給のためにすべきことは?様々な立場の農家に聞く 今後のコメ生産への思い

この記事をシェア

  • LINE
秋田 2025.05.29 18:07

秋田が全国3番目の生産量を誇る「コメ」についてです。

小泉農林水産大臣は、28日、衆議院の委員会で、2021年度産の古米である備蓄米放出について「熱過ぎるマーケットに水を差さないといけない」と強調し、価格について「5キロで1800円程度になる」と説明しました。

連日コメの価格ばかりが注目され、本質であるコメの安定供給のためには何をすべきかという議論が、今、埋もれてしまっています。

田植え真っ盛りの県内の田んぼで、今後のコメ生産についての思いを様々な立場の農家に聞きました。

■コメ価格への思いは?家族経営農家に聞く 

晴天に恵まれた28日。

一家総出で田植えに追われている農家に、今のコメの価格について聞いてみると。

農家
「なんかマジックにあっているような感じ。農家の販売価格と売っているお米とすごいでしょう?だからどこでマジックショーをやっているのか分からない」

店頭に並ぶ価格と、農家の収入との差に複雑な思いを抱きながらも、今年も生計を立てるため、そして、代々受け継いだ田んぼを守るため、苗を植えています。

強く感じているのは、昔と比べて生産者の立場が弱体化していることだと言います。

農家
「協同組合(JA)からみんな離れていっているでしょ。農家も団結力がなくなっている感じ」
「(農家の)声が、全然力強いのが出てこない。(聞こえてくるのは)政治家ばっかしだから」

■多収米の栽培に取り組む 大潟村・涌井さんの提言

コメの安定供給が望まれる中、従来のあきたこまちなどに比べて2倍近い収穫量が見込める多収米の栽培に取り組む、大潟村の涌井徹さん。

涌井さん
「日本は世界に冠たる技術的なことができる国なんだから、ここに力を注ぐってことでしょうね」

コメの増産に向けて、品種の改良のみならず、大きな投資が必要だと訴える涌井さん。

本来、その役目を果たすべきJAの存在感のなさに苦言を呈します。

涌井さん
「全農は、農家が出資し、農家の経済の安定と生活の向上のために作った組織が、全く農業の役にたっていない。今まさに去年、今年、米価の暴騰の時、全農がこれからどうしたらいいかという発言を全くしていないのよ、全農は。全くの傍観者」
「ここまで農業が衰退しても、農家から集めた(農林中金の)100兆円、それを延々に外(国外)に向かって投資をしている。これをやっぱり変えないと」
「まさに今、農業が政治の道具にされたらダメ。今、本気になって、日本の農業はこれじゃダメだということを、声をあげなきゃいけないのね」

55年前、食料増産という国策の中で、大潟村に入植した涌井さん。

その理念を時代に合わせて刷新させた構想を、初めて口にしました。

涌井さん
「(農地や農機具を無償で)全部セットにして」
「新しい入植」
「(資本は)何もなくても、裸一貫で、知識と意欲だけあれば、農業に入って」
「農林中金が金を出せば、何でもできるのよ。もし農協がしないならば 、まぁしないと思うからこのプランを作ってね。ファンドに声をかけて思い切ってね、新しい日本のコメ農業をしたらどうですかって提案しようと思っているの」

「いまのピンチは農業を家業から産業に生まれ変わらせるチャンスだ」と考えた涌井さんは、この構想を含めた書簡を小泉農林水産大臣に送ったということです。

■バイトを経験した消費者と新進気鋭の若手農家は

一方で、農家単体では人手不足が深刻で、生産拡大しようにもできないのが現状です。

こうした中、大館市の農業法人では「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトのアプリを使って、農業に関わったことのない人にも繁忙期の作業を担ってもらっています。

スキマバイトしている主婦
「きょう2回目なんです、ここ」
「前回は種まき機械を使うのをやらせてもらって、来るたびに新鮮な作業があるんです。深いなって、苗づくりも」

この育苗ハウスで、28日から3日間アルバイトをしている女性は、コメ作りの大変さを実感することができたと話します。

スキマバイトしている主婦
「手間暇がとにかくすごい。半日で苗が乾いちゃうのでびっくりして」
「こんなに手間暇かかっていたのに、今すごいお米(の価格)で騒がれてますけど、私にはよく分からないですけど、すごい苦労されて出来上がっているものなんだなと思っています」

高齢化が進み、離農者も増える中、国民の主食・コメをどう安定的に生産していけばいいのか。

模索が続いています。

佐藤農園 佐藤仰喜 代表
「私はこの先の持続可能な農業になるためには、二極化になるしかない。ひとつは、家庭菜園的に自分たちの食べる分だけを作る。近所に分けるくらい。それはそれでいいと思う。それもひとつのコミュニティですから。ただ、ビジネスとしてやる農家は、伸びてくれないと、日本の食料安全保障も含めて安定しませんから。そこを行政がどう支援していくかではないか」