ABS秋田放送

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2018年11月24日

踏み出す ~垣根を越えた仲間たちの声~

【フットサル プレー中の音】
※走る音、ボールを蹴る音、「お、ナイスパス」、シュート音、歓声

ここは、宮城県仙台市にあるフットメッセ長町。
コートでは20代の若者を中心にした団体が、フットサルを楽しんでいます。
しかしよーく見ると、普通のフットサルでは見慣れない
あるものを身に付けてプレーしています…

【参加者インタビュー】
女性『試合の時は耳栓をして、アイコンタクトとか手話とか、表情を読みとって、やるっていうことがすごく楽しいです』
男性『(耳栓をしてスポーツするっていうのは…)初めてですね、はい。ちょっとだけ遮断されるのでやりにくい部分はありましたね』

彼らが身に付けていたのは、耳栓
この日行われていたのは、『ろう者』や『デフ』と呼ばれる聴覚に障がいがある人たちと一般の参加者が、フットサルをしながら交流する『みちのくデフフットサル交流会』というイベントです。
このイベントを企画・運営したのは秋田市に住む小松祐樹さん。
自身も聴覚に障がいがあり、補聴器をつけなければほとんど聞こえません。
小松さんは今回の交流会にあたって、こんな思いを抱いていました。

【小松さんインタビュー】
健常者の方にも耳栓を使って交流してもらうことで、聴覚障がいという大変さ。
コミュニケーションを取るのがいかに大変か、体験してもらいたかったですね。

健常者にも耳が聞こえない状況を体験してほしかった。
聴覚障がいについて、より多くの人に知ってもらうため、秋田から宮城へ遠征してイベントを行った小松さん。
宮城県では、同じ思いを持つ仲間たちが彼を待っていました。

『踏み出す ~垣根を越えた仲間たちの声~』

【交流会 開会式の様子】
小松『こんにちは。参加していただきまして本当にありがとうございます』

開会式の様子
開会式の様子

10月27日 土曜日。
「こんにちは」という小松祐樹さんのあいさつから
『みちのくデフフットサル交流会』がスタートしました。
会場は、宮城県仙台市にあるフットメッセ長町というフットサル施設。
屋根付きで、人工芝のコートが2面敷かれています。
この日は男女合わせて26人が集まりました。
そのうち、聴覚に障がいがある『ろう者』は14人。
聴こえに問題のない健常者は12人です。
ろう者と健常者のやり取りは、主に口で話す音声言語と手話を交えて行います。

【参加者 自己紹介】
※自己紹介をする健常者の言葉を、手話を交えて通訳する様子

手話に慣れていなくても、周りが通訳してフォローしてくれます。
参加者同士での自己紹介を終え、いよいよデフフットサル交流会が始まります!

ここで簡単に、この日行われたデフフットサルのルールを確認しておきましょう。
フットサルは、主に室内で行われる5人制のサッカー。
デフフットサルも基本のルールは同じです。
公式戦では試合時間は前半後半ともに20分ですが、この日は交流が目的ということで前半・後半を分けず7分で1試合としています。
ピッチの広さはサッカーのおよそ3分の1。ボールはフットサル専用で、サッカーボールよりも弾みにくいものを使います。
この日集まった26人が4チームに分かれ、2チームずつ組み合わせを変えながら試合をします。一度にコートに出るのは1チーム5人。
交代は自由です。
そして、最も特徴的なのは…

【耳栓ルール 説明の様子】
小松『今回、健常者には耳栓を使ってもらいますので』
参加者『新しい』『難しそう』『面白~い』
小松『大丈夫、大丈夫』
(参加者たち、笑いあう声)

健常者は耳栓をつけてプレーをします。
全員の準備が整いました。さあ、キックオフです!

【試合音声】
※走る音、パスを出す音、小松『あー、やっべ!』

運営の小松さんも、一緒に試合に参加します。
小松さん、必死に走って…シュート!

【試合音声②】
※シュート音、チームメイトと喜び合う声
小松『久しぶりに走った(笑)』
スタッフ『1点決めたね。どうだった?』
小松『めっちゃプレッシャー感じました。なんとか取りました、はい(笑)』

試合中
試合中

参加者たちはこの後、ろう者・健常者関係なく、
2時間ほどフットサルをしたり、合間に会話を楽しんだり、
交流の時間を過ごします。
参加者に感想を聞いてみると…

【参加者インタビュー】
男性『今回はやっぱり耳栓をしている状態だったので、後ろから味方が来たりだとか、接近してたりっていうのがわかんなかったのでその中で意思疎通するのに、アイコンタクトとか…より聴覚障がいのある方だと大事になってくるのかなと思いました』
スタッフ『聴覚障がいの人との関わりは普段あるものですか?』
男性『自分は弟が聴覚障がいを持っていて、弟と会話をするのに今まで簡単な手話だったり、ジェスチャーで意思疎通してたんですけど、弟もどんどん成長していくにつれて、自分のわからない単語を表現されるとちょっと理解できない(自分が)悔しくて。それで大学に入ってからサークルに入って手話を覚えたらもっと会話できるなって思って、そこからやり始めたんですけど…今日は休憩の時間とかに天気の話とか本当にたわいない話しかしてないんですけど、まだまだ手話を始めて1年半しか経ってないので、これからもっと頑張っていきたいと思います』

参加者たちの様子を見て、企画を担当した小松さんは…

【小松さんインタビュー】
今回初めて参加する方もいて、手話のことで最初戸惑ってたけど…スタッフだけでなく、一緒にいたチームメイトも手話をわかりやすくフォローしているところを見て『あ、こういうコミュニケーションってとても大事だなぁ』と思いまして、改めてコミュニケーションというものはいかに重要なものであって、それを理解するのはどれだけ大変なのかを実感してもらえたと思います。

コミュニケーションの大切さと、むずかしさ。
特に、手話に慣れていない人にとっては難しいイメージのある、
ろう者とのコミュニケーションですが、この交流会には、お互いが歩み寄りながらコミュニケーションの壁を越える人たちの姿がありました。

集合写真
集合写真

デフフットサル交流会を終えた小松さんは、その後仙台駅に向かいました。
実はこの日、もうひとつ企画しているイベントがあったんです。

【パレード前あいさつ】
小松『これから、パレードをやります』

当日、ちょうどシーズンだったハロウィンにちなんでの仮装パレード。
小松さんは吸血鬼の格好で、参加しました。
自分の姿を見てこう話します。

小松さん 仮装
小松さん 仮装

【小松さんコメント】
初めて仮装して、ちょっと恥ずかしいなとは思ったんですけども、
なんだろう、新しい自分が出たみたいと言うか…

少し恥ずかしいけれど、新たな自分に出会った気がした瞬間でした。
このパレードもデフフットサル交流会と同じく、聴覚障がいについて広く知ってもらうために行うものです。
小松さんを含め10人のろう者と、16人の健常者、合わせて26人が集まり、仮装しながら、仙台駅前からアーケード街などを目指して行進していきます。

出発前、小松さんがタテヨコ50cmほどの白いパネルに、何か書こうとしています。

【パネル制作】
小松『私たちはデフ…ええいどうにでもなれ!』

「私たちはデフ/聴覚障がいです」と大きくパネルに書きました。

デフ パネル
デフ パネル

このパネルと、写真共有アプリ インスタグラムの投稿画面を模した、自作の顔はめパネルを持って出発です。

【仮装 出発】
小松『よっしゃ、行くべ!(デフの人が)劣っているわけでもなく、ただ、みんなと同じ立場で同じ人間であるということを伝えたいですね。まあそのためにも、手話という素晴らしい言語とデフのことをより知ってもらえればと思います。はい。』
通行人『すごーい、楽しそう。撮って、一緒に撮って?はい、チーズ…OK、ありがとう~!』
小松『いいね、いいね、今のやっていこう!』

自分でこうした企画をするのは初めてで、慣れないながらも強い意志をもって行進しました。
小松さんが、ここまで積極的に行動し続けるのには理由があります。

【小松さん インタビュー】
私は今まで生きてきて、やっぱり聴覚障がいという理由だけで相手から声をかけられることが少なかったときはありましたね。相手からすると、聴覚障がいに対してどう話せばいいのか…ゆっくり話せばいいのか、紙に書けばいいのかとか、コミュニケーションの方法がわからないから声をかけにくいというそういう壁があるからかもしれないですね。そういうこともあって、昔は自分から話すことはなかったですね。

聴覚障がいが理由で、なかなか話しかけてもらえず、自分自身も人に話しかけるのが苦手になった時期がありました。
しかしその後、気持ちの変化があり、今のように積極的に行動できるようになったと言います。

【小松さん インタビュー】
自分から積極的に行動して話すことによって、相手に対しても思いやりが芽生えてきますし、何か障がいがあればそこを理解してフォローしていく、それが人の思いやりだと思いますし…みんな同じ人間なので健常者やデフの方、男女、年齢関係なくいろんな人たちが交流するという場をつくれたのは非常に重要なことだと感じました。こういった交流の場を、各地で企画を設けて増やしていきたいという思いはあります。

みんな同じ人間だから、触れ合えばきっと分かり合える。
小松さんは障がいがある人と健常者が触れ合う場を設け、互いに一歩踏み出すことが大事だと考えているようです。
小松さんの取り組みが秋田県や東北だけでなく、全国に広がれば、障がいのある人と健常者、両方にとって住みよい社会に近づくかもしれませんね。
まずはラジオを聴いている方にも、その第一歩として簡単に使える手話を教えてくれました。
これは世界で通じるものです。
みなさんもやってみてくださいね。

【サンキュー】
小松『サンキューっていう、ありがとうっていう言葉なんですけど。右手の手のひらを顎に当てて、前に突き出すような…これがサンキュー!』
スタッフ『わかりました。では以上で終了です』
小松『ありがとう。サンキュー!』
(笑いあう声)

おまけ
取材の一環でABS秋田放送の本社を訪れた小松さん。
ナレーションを担当する鴨下望美アナウンサーとツーショットで1枚!

ツーショット
ツーショット

2018年1月27日

歩み寄る~手話合宿参加者の声~

1月20日(土)、21日(日)
秋田県青少年交流センター ユースパルで、
若者たちを中心に、“ある合宿”が行われました。
会場をのぞいてみると、丸く並べた椅子に座った参加者たちが、
向かい合って何かゲームをしています。

【山手線ゲーム音】
「はい、では始めたいと思います。どうぞ!」
「バナナ…すいか!…マンゴー…グレープフルーツ」

聞こえてくるのは、参加者の楽しそうな声と、果物の名前…
いったい何が行われているのでしょうか?

【山手線ゲーム 説明】
佐々木さん「山手線ゲーム、手話で。声もOK。ただ声だけはダメ。」

手話で行う山手線ゲーム。
実はこの合宿は、手話や、耳に障がいを持つ『ろう者』についての理解を深める『手話合宿』なんです。
この合宿を企画したのは、秋田市に住む酒井敬幸さん、25歳。
手話合宿を通して、実現したい思いがあるそうです…

【酒井さんインタビュー】
普段は手話サークルを立ち上げて、代表として務めていたりとか、大学に行かせていただいて手話の講師としても行ってるんですけども…
そこでやることっていうのはどうしても限界があるなと。
もっとできることがあるんじゃないかと思って、
合宿という形で幅広い人たちに手話に親しんでもらって、1日ろうの人と過ごすことによって、わからなかった生活ぶりだったりとか、
裏の…いろいろ思っていることを聴けるかなと思ったので、
合宿という形で今回実行しました。

健常者と聴覚障がい者がお互いの生活を知る。
酒井さんはそのことがコミュニケーションの第1歩として、
手話合宿を企画しました。
合宿に参加した人たちの声から、耳が聞こえない“ろう者”とのコミュニケーションの形を探ります。

『歩み寄る ~手話合宿 参加者の声~』

1月20日 土曜日、21日 日曜日に行われた手話合宿。
主催の酒井さんを含めて26人が集まりました。
そのうち5人が聴覚に障がいを持つ ろう者です。
合宿では具体的にどのようなことを行うのか、
酒井さんに尋ねました。

【酒井さんインタビュー】
内容としては1日目は手話ソング、歌に合わせて手話で表現したり、あとは学生さんにお願いしてフラダンスをやってもらったんですが…フラダンスというのはただのダンスではなくて、振り一つ一つに意味があって成り立っているというので、手話と似てるなと。
と、いうことで今回手話合宿に持ってきたのと、あとは講師の方を招いて、手話のことや聴者ではわからない、ろうの世界を語っていただいたり、聴者の気づかない、ろうの困っていることだったりを講演してもらってって形ですね。

今回の合宿には、東京在住で、普段は聴覚障がい者の支援施設を運営している佐々木崇志(たかし)さんが講師として参加しました。
佐々木さん自身も聴覚に障がいを持っていて、
ろう文化や手話の普及のために、全国各地で講演を行っています。
この日は、ゲームやグループワークを交えて、
手話やろう者の実際について講演を行いました。
その中の1つが、手話を使っての山手線ゲーム。

【山手線ゲーム】
佐々木さん「どうぞ!」
参加者「バナナ、ぶどう、すいか、マンゴー、さくらんぼ、柿…」

今回は「果物の名前」をお題に、手話と合わせて答えていくこのゲーム。
中には手話で表すのが難しい、こんなフルーツも…

【スターフルーツ】
参加者「スターフルーツ」
佐々木さん「スターフルーツって何?知ってる?知らなーい。あ、俺だけ?」

スターフルーツ。こうした自分の知らない果物が出てきた時も、
佐々木さんはみんなが手話で表現できるように、
みんなと一緒に考えて、オリジナルの手話を作ります。

佐々木さん「考えましょう。スターフルーツ。いい案、いいアイディアある人」

みんなが思い思いの『スターフルーツ』を、手話で表現します。

佐々木さん「OK、わかった。これで行こう」

このゲームの中では、フラダンスで「星」を表す振りと、
「果物」を表す手話を組み合わせて「スターフルーツ」と表すことにしました。
佐々木さんは、参加者に手話での山手線ゲームを通じて、
2つの力を身に付けてほしいと言います。

佐々木さん「表現力。あとは…想像力が大事。」

表現力と想像力。
この2つの要素は、ろう者とのコミュニケーションにおいて、大きな役割を持っています。
佐々木さんは、手話を用いるろう者の文化について、
次のように話します。

佐々木さん「ろう文化は、音がないので、とにかく目で見るっていう文化だと思います。」

ろう者は耳で情報を得られない分、手話をはじめ、
目で情報の多くを得ています。
そのため、健常者に比べて、自分の気持ちや考えを、目に見える形でどう表現するか、また、相手が何を伝えようとしているのか汲み取る力が必要です。
合宿の後半では、こうした『ろう者と健常者の違い』について知るため、グループで話し合う時間もありました。

【話し合い】
「ろうの人はフレンドリーですよね」
「人との距離の取り方が違うんだと思う」
「表情も」
「表情が豊かですよね、いっぱいある!」
「たくさん、って(手話で)どうでしたっけ?」
「(手話をしながら)たくさん。(教える)」

話し合いも、手話を交えて行います。
参加者同士で手話を教えあいながら、『ろう者と健常者の違い』について考えをまとめ、全体での発表が始まりました。
参加者たちはどのような考えを持ったのでしょうか?

【発表 ダイジェスト】
「ろう文化と聴文化を比べた時に、大きな違いっていうのは、情報の取り方が違うって思って、ろう文化では耳が聞こえないから、例えば地震が起きて、家が崩れた時に(救助者が)誰かいますかって叫んでも助けてと呼べないし、アナウンスとかも聞こえないからいろいろ大変」
「僕たちは例えば夜に眼鏡を外しても、歩けるし、普通に生活できるけど、ろうの人たちはもし目が悪くなったら、生活がもっと難しくなると思います」

耳が聞こえないことによる、災害時の不便さや、
目が悪くなると、情報を得る手段が減ってしまうなどのネガティブな面も出る中、こんな考えも出されました。

【発表 ダイジェスト】
「手話勉強する前は、ろう文化っていうと手話を使うから難しいとか、歩みにくいって思いがちだったけど、手話勉強してからは、ろう文化っていうのは手話っていうよりも音があるか、ないか。で、健常文化は逆に音がある世界かなって思うようになって、だから手話だから話しにくいとか思わず、情報を得る方法が違うのかなって思うようになった」
「日本の特徴かなと思うけど、集団で一人だけ目立つと、あれ?は?ってなっちゃうことがあって、受け入れる努力をしないのは健聴の世界だけじゃなくて、ろうの世界にもあるんだなって知って、歩み寄りがもっと大切と思います」

ろう者と健常者、お互いの違いを受け入れ、
分かり合うためには何が必要なのでしょうか?
合宿を企画した、酒井敬幸さんは、ろう者と健常者の触れ合いについてこう考えます。

【酒井さんインタビュー】
聴者にとっては、ろう者が少ないので、まず理解することが大事というのはあると思いますが、理解する前に人と会わないと全く分からないと思うので、やっぱり実際に関わってみて『こういうことが大変なんだな』『こういうことで困ってるんだな』、逆に『こういうイメージだったけど、意外と大丈夫だな』とか、実際に触れあってみて、健聴の人にはもっと歩み寄ってほしいというのと…
ろう者の方は、ろうの方自身に、もっとろうのことを健常者に知ってもらうっていう活動をしてもらって、お互いに歩み寄れたらなと思います。

お互いが実際に関わりあって、歩み寄る。
そのことがろう者と健常者が共に生きていく上で必要だと言います。

2日間の手話合宿で歩み寄りはできたのか。
合宿を終えた参加者に、話を聞きました。

【参加者】
「私が今思うのは、ろう者の人たちが生活している学校だったりとかが一般の健常者の世界から隔離されていて、お互いに知る機会があまりないなと感じているので、もっと相互の交流とかを深めて…別に耳が聞こえないからといって特別なわけではなくて、ただ単に耳が聞こえにくいという特性を持った普通の人間だということをみんなで意識していけば、もっと過ごしやすい社会になるんじゃないかなって思っています」
「ろうと健聴だけの話ではないと思うんですけど、まず、自分が持っている相手の情報だけで相手を判断しないで話してみるっていうのが、意外と楽しい、共通点を発見することだと思うので、それが大切だと思います」

ろう者の目線から、今回の合宿はどう映ったのか。
合宿に参加した、ろう者の女性に聞きました。

【ろうの参加者】
「とても楽しかったです。普段の生活の中で、聞こえない人とか聞こえる人っていうことについて考えながら生活することがないので、改めて見直したときにいろんな気付きがあって面白いなって思いました。シンプルになりますけど、健常者・ろう者っていう言葉にはなりますが、結局は人と人との関わりになるので、まずはお互いに相手のことを知ろうとする気持ちが一番大事だと思います」

同じ人と人。
ろう者と健常者のコミュニケーションには、
見落としがちなことへの気づきが何よりも大事なのかもしれません。

酒井さんは今後の活動について、こう話します。

【酒井さんインタビュー】
1回で終わってしまったら、そこで終わりなので。継続的にやることによって、今後にもつながっていくかなと思うので、できれば2回、3回と続けていきたいと思っています。
私は手話というものでやっていますけど、秋田県内でもうちょっとできること、やることってあると思うので、もっと活躍する場とか楽しめる場を作っていけたらなと思っています。

合宿を通して、確実にお互いの距離を近づけた参加者たち。
お互いの垣根を越えて生活していくために、
ろう者、健常者、それぞれが“歩み”続けます。

2017年8月26日

未来につなぐ~デフフットサル日本代表チームの“声”~

「デフリンピック」という言葉、あなたは知っていますか?

【街頭インタビュー】
 「え、なんですかそれわかんない」
 「ちょっと全然想像もつかないんですけど・・・」
 「障がい者とかのかな・・・?全然わかんないですけど、予想で」

デフリンピック。「デフ」とは聴覚に障がいがある人を意味します。
身体障がい者や視覚障がい者、
知的障がい者が参加するパラリンピックとは別に開かれる、
聴覚障がい者だけのオリンピックが「デフリンピック」です。
4年に一度、世界規模で行われ、
今年7月にトルコで23回目となる大会が開かれ、熱い戦いが繰り広げられました。
しかし、日本ではデフリンピックの知名度、そして、聴覚障がい者への理解度は低いままです。

そんな中、
「聴覚障がい者のスポーツ、デフスポーツをもっと広めたい!」
「スポーツを通じて、聴覚障がい者に対する理解を広めたい!」
という気持ちで、聴覚障がい者のフットサル、「デフフットサル」で
世界を目指す青年が秋田にいます。

【小松さん】
今回のデフリンピックはサッカーだけで、
もちろん他のスポーツはあるけど、フットサルはまた別ということになりまして。
再来年にワールドカップに出るために頑張っているところです。

秋田市に住む小松祐樹さん、25歳。
生まれつき耳が不自由で、補聴器がなければほとんど聞こえません。
小松さんは、この夏、大きなチャレンジをしました。

【小松さん】
今回の合宿で、最終選考会ということもあるので、より引き締めて、
代表として選ばれるようにベストを尽くしていきたいと思います。

デフフットサルでワールドカップに出場することを目指して、日本代表候補合宿に臨んだ小松さん。
合宿先には、同じく聴覚障がいがある選手が集まり、みんなが、“同じ志”を持ってプレーをしていました。

未来につなぐ~デフフットサル日本代表チームの“声”~

8月11日。
神奈川県 ミズノフットサルプラザ藤沢で、
デフフットサル日本代表候補の合宿が、
3日間の日程で始まりました。
代表監督、川元剛(たけし)さんは意気込みを話しました。

【川元監督】
デフフットサル日本代表は、来年度行われるワールドカップ予選に向け、がんばっています。応援よろしくお願いします!

この合宿に、秋田市の金融機関で働いている小松祐樹さんの姿がありました。
小松さんは、これまで、仕事を終えてから地元の社会人チームでフットサルの練習を続けてきました。

小松さんは小学生の時から野球を続けていましたが、肩を痛めて断念。
そんなとき、知り合いがサッカーやフットサルを通じて聴覚障がいのことをPRしていると知り、半年前にフットサルを始めました。

フットサルは、主に室内で行われる5人制のサッカーです。
試合時間は前半後半ともに20分。サッカーのおよそ半分の時間です。
ピッチの広さはサッカーのおよそ3分の1。
ボールはフットサル専用で、サッカーボールよりも弾みにくいものを使っています。
基本的なルールはデフフットサルも通常のフットサルも同じですが、ひとつ、大きく異なる点があります。

【小松さん】
補聴器をつけてはいけないルールがあるので、ほぼ聞き取れないですけれども、簡単な手話だったり、左だ!右だ!などやりながらプレーしてますね。

「補聴器をつけてはいけない」というルール。
補聴器には性能差があるため、どの選手も、耳の聴こえない状態でプレーするという公平性のために決められています。
聴こえないことによる難しさや、面白さはなんなのか。
デフフットサル日本代表の選手2人に聞きました。

【東海林選手】
聴こえない選手同士のフットサルになるので、コミュニケーションの方法が声ではないというところが面白さであり難しさであると思います。
たとえば指差しの指示とか、あとは手を上に伸ばして「自分がマークするよ」とか、そういう視覚から見える指示の出しあいが必要な場面がすごく多くて、それをもって次をどう動くのか判断するのかっていう面白さはあると思います。

【設楽選手】
デフフットサルの難しさはひとりひとり見る視点、見る景色が違うため、イメージをひとつにするっていうのが難しいと思っております。
面白さは、先ほども言った通りみんなひとりひとりイメージが違うので、それがひとつになったときはすごい嬉しいし、そこが魅力だと思っております。

秋田市から合宿に臨んだ小松さんは、デフフットサルでは「目」が
大事だといいます。

【小松さん】
耳が聴こえない分、「目」、要はアイコンタクトを普通の人より、より取る必要があるので、走り回りながら仲間とのアイコンタクトを取るのが難しいですね。
でも逆に言えば、アイコンタクトがうまく取れて、点に結びつけることができれば、やっぱり「よっしゃ!」ってなるし、ゴールを決めた瞬間はみんな決めた選手のところに行って喜びを分かち合いますね。

身振り手振りでの連携やアイコンタクト、イメージの共有。
言葉がないからこそより深く通じ合い、プレーがひとつになった時に感じる喜びが、デフフットサルの魅力のひとつかもしれません。

神奈川県で行われた、デフフットサル日本代表候補の合宿。
この合宿で、代表選手が選び出されます。
秋田市の小松さんは、この競技を始めてまだ半年。
そんな短期間で日本代表の最終選考にエントリーできたのには、理由があります。
5年前から代表チームのトレーナーを務める橋本賢太さんが話します。

【トレーナー 橋本賢太さん】
デフフットサルの現状についてなんですけど、競技人口は日本でもかなり少なくて、やはり今は誰でも入れるという形であったり、競技人口が少ない中で、やりたいという有志を集めてやっているのが現状なので・・・
そこを変えて行くというのが現段階です。

今回の候補合宿も協会からの召集ではなく、参加者を公募する形で行われました。
日本における、デフフットサルが抱える課題は他にもあります。
日本ろう者サッカー協会 理事の田口さんに伺いました。

【日本ろう者サッカー協会 理事 田口さん】
まず「デフリンピック」という言葉の認知度が、日本では11%しかありません。
日本におけるデフリンピックとかデフのサッカー、フットサルを知っている人はまだまだ少ないということと、聴覚障がいそのものの理解が少ないということが挙げられます。

2014年に行われた、日本財団パラリンピック研究会が行った調査によると、日本でのデフリンピックの認知は、11.2%でした。
海外を見てみると、韓国は59.4%、オーストラリアは30.1%、
アメリカは25.5%という数字が出ています。
今年7月にトルコで行われたばかりのデフリンピックでは、日本人選手が金メダル6個、銀メダル9個、銅メダル12個を獲得するなど大活躍でしたが、そうした活躍も、国内のメディアではなかなか取り上げられず、ほとんど知られていません。
もうひとつ、大きな問題も・・・

【日本ろう者サッカー協会 理事 田口さん】
それから、日本代表活動を行うにあたって、選手の自己負担がまだまだ大きくて、経済的な負担がかかっています。

今回小松さんが参加した合宿も、ひとり1万3,000円の参加費と、それぞれ会場までの交通費が自己負担になっています。
自己負担も大きいのに、なぜ世界を目指し続けるのか。
日本代表チーム キャプテンの東海林選手が話します。

【東海林選手】
2年後に世界大会があります。
前回は7位だったので、今回はベスト4。
そしてメダルを目指していきたいと思います。
耳が聴こえなくてもこれだけのことが出来るってことは伝えていきたいと思っています。
フットサルをやっていて、健常者の人から「あいつ耳聴こえないんだぜ。すごいね」って思われるような人になりたいというところと、それだけできるっていう事は知って欲しいと思います。

「耳が聴こえなくても、世界で活躍できる」
その自信を胸に、副キャプテン 設楽選手は、聴覚障がい者たちに、こんなメッセージを送ります。

【設楽選手】
やっぱり耳が聴こえないって言って、コミュニケーションがとれないとか、手話がわからないって言う人がたくさんいると思うけど、もっと、耳が聞こえない人たちが自分から積極的に社会に出て、少しでも自分から動くっていうことを大切にして欲しいと思います。

未来の子どもたちのために。
この思いは、小松さんも一緒です。

【小松さんの思い】
子どもってさまざまな情報を得て、脳を発達させているので、耳が聞こえない子どもだと、その脳の発達が遅れてしまって、周りとの差が大きく広がって置いていかれてしまう。
そういったことが私が小さいときあったので、そういったことをなくすために、自分が大変な思いをしたり、苦労してきたことを周りの人たちにも伝えて、未来の子どもたちが情報を取ることができなくて、周りとの差を広げて遅れてしまわないように、その差をいかになくすか、そういった活動をしたいという思いがありました。

小松さんは今、最終選考の結果を待っています。
代表に選ばれれば、次の舞台は来年のアジア予選。
そして2年後のデフフットサル ワールドカップが待っています。

耳が聴こえない。
そのことできっと思い悩み、苦しんだこともあるはず。
それでも、自分たちの活躍で子どもたちに夢を。
そして聴覚障がい者の未来を。
その思いで、小松さんはチームとともに挑戦を続けます。

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