ABS秋田放送

2018年11月24日

踏み出す ~垣根を越えた仲間たちの声~

【フットサル プレー中の音】
※走る音、ボールを蹴る音、「お、ナイスパス」、シュート音、歓声

ここは、宮城県仙台市にあるフットメッセ長町。
コートでは20代の若者を中心にした団体が、フットサルを楽しんでいます。
しかしよーく見ると、普通のフットサルでは見慣れない
あるものを身に付けてプレーしています…

【参加者インタビュー】
女性『試合の時は耳栓をして、アイコンタクトとか手話とか、表情を読みとって、やるっていうことがすごく楽しいです』
男性『(耳栓をしてスポーツするっていうのは…)初めてですね、はい。ちょっとだけ遮断されるのでやりにくい部分はありましたね』

彼らが身に付けていたのは、耳栓
この日行われていたのは、『ろう者』や『デフ』と呼ばれる聴覚に障がいがある人たちと一般の参加者が、フットサルをしながら交流する『みちのくデフフットサル交流会』というイベントです。
このイベントを企画・運営したのは秋田市に住む小松祐樹さん。
自身も聴覚に障がいがあり、補聴器をつけなければほとんど聞こえません。
小松さんは今回の交流会にあたって、こんな思いを抱いていました。

【小松さんインタビュー】
健常者の方にも耳栓を使って交流してもらうことで、聴覚障がいという大変さ。
コミュニケーションを取るのがいかに大変か、体験してもらいたかったですね。

健常者にも耳が聞こえない状況を体験してほしかった。
聴覚障がいについて、より多くの人に知ってもらうため、秋田から宮城へ遠征してイベントを行った小松さん。
宮城県では、同じ思いを持つ仲間たちが彼を待っていました。

『踏み出す ~垣根を越えた仲間たちの声~』

【交流会 開会式の様子】
小松『こんにちは。参加していただきまして本当にありがとうございます』

開会式の様子
開会式の様子

10月27日 土曜日。
「こんにちは」という小松祐樹さんのあいさつから
『みちのくデフフットサル交流会』がスタートしました。
会場は、宮城県仙台市にあるフットメッセ長町というフットサル施設。
屋根付きで、人工芝のコートが2面敷かれています。
この日は男女合わせて26人が集まりました。
そのうち、聴覚に障がいがある『ろう者』は14人。
聴こえに問題のない健常者は12人です。
ろう者と健常者のやり取りは、主に口で話す音声言語と手話を交えて行います。

【参加者 自己紹介】
※自己紹介をする健常者の言葉を、手話を交えて通訳する様子

手話に慣れていなくても、周りが通訳してフォローしてくれます。
参加者同士での自己紹介を終え、いよいよデフフットサル交流会が始まります!

ここで簡単に、この日行われたデフフットサルのルールを確認しておきましょう。
フットサルは、主に室内で行われる5人制のサッカー。
デフフットサルも基本のルールは同じです。
公式戦では試合時間は前半後半ともに20分ですが、この日は交流が目的ということで前半・後半を分けず7分で1試合としています。
ピッチの広さはサッカーのおよそ3分の1。ボールはフットサル専用で、サッカーボールよりも弾みにくいものを使います。
この日集まった26人が4チームに分かれ、2チームずつ組み合わせを変えながら試合をします。一度にコートに出るのは1チーム5人。
交代は自由です。
そして、最も特徴的なのは…

【耳栓ルール 説明の様子】
小松『今回、健常者には耳栓を使ってもらいますので』
参加者『新しい』『難しそう』『面白~い』
小松『大丈夫、大丈夫』
(参加者たち、笑いあう声)

健常者は耳栓をつけてプレーをします。
全員の準備が整いました。さあ、キックオフです!

【試合音声】
※走る音、パスを出す音、小松『あー、やっべ!』

運営の小松さんも、一緒に試合に参加します。
小松さん、必死に走って…シュート!

【試合音声②】
※シュート音、チームメイトと喜び合う声
小松『久しぶりに走った(笑)』
スタッフ『1点決めたね。どうだった?』
小松『めっちゃプレッシャー感じました。なんとか取りました、はい(笑)』

試合中
試合中

参加者たちはこの後、ろう者・健常者関係なく、
2時間ほどフットサルをしたり、合間に会話を楽しんだり、
交流の時間を過ごします。
参加者に感想を聞いてみると…

【参加者インタビュー】
男性『今回はやっぱり耳栓をしている状態だったので、後ろから味方が来たりだとか、接近してたりっていうのがわかんなかったのでその中で意思疎通するのに、アイコンタクトとか…より聴覚障がいのある方だと大事になってくるのかなと思いました』
スタッフ『聴覚障がいの人との関わりは普段あるものですか?』
男性『自分は弟が聴覚障がいを持っていて、弟と会話をするのに今まで簡単な手話だったり、ジェスチャーで意思疎通してたんですけど、弟もどんどん成長していくにつれて、自分のわからない単語を表現されるとちょっと理解できない(自分が)悔しくて。それで大学に入ってからサークルに入って手話を覚えたらもっと会話できるなって思って、そこからやり始めたんですけど…今日は休憩の時間とかに天気の話とか本当にたわいない話しかしてないんですけど、まだまだ手話を始めて1年半しか経ってないので、これからもっと頑張っていきたいと思います』

参加者たちの様子を見て、企画を担当した小松さんは…

【小松さんインタビュー】
今回初めて参加する方もいて、手話のことで最初戸惑ってたけど…スタッフだけでなく、一緒にいたチームメイトも手話をわかりやすくフォローしているところを見て『あ、こういうコミュニケーションってとても大事だなぁ』と思いまして、改めてコミュニケーションというものはいかに重要なものであって、それを理解するのはどれだけ大変なのかを実感してもらえたと思います。

コミュニケーションの大切さと、むずかしさ。
特に、手話に慣れていない人にとっては難しいイメージのある、
ろう者とのコミュニケーションですが、この交流会には、お互いが歩み寄りながらコミュニケーションの壁を越える人たちの姿がありました。

集合写真
集合写真

デフフットサル交流会を終えた小松さんは、その後仙台駅に向かいました。
実はこの日、もうひとつ企画しているイベントがあったんです。

【パレード前あいさつ】
小松『これから、パレードをやります』

当日、ちょうどシーズンだったハロウィンにちなんでの仮装パレード。
小松さんは吸血鬼の格好で、参加しました。
自分の姿を見てこう話します。

小松さん 仮装
小松さん 仮装

【小松さんコメント】
初めて仮装して、ちょっと恥ずかしいなとは思ったんですけども、
なんだろう、新しい自分が出たみたいと言うか…

少し恥ずかしいけれど、新たな自分に出会った気がした瞬間でした。
このパレードもデフフットサル交流会と同じく、聴覚障がいについて広く知ってもらうために行うものです。
小松さんを含め10人のろう者と、16人の健常者、合わせて26人が集まり、仮装しながら、仙台駅前からアーケード街などを目指して行進していきます。

出発前、小松さんがタテヨコ50cmほどの白いパネルに、何か書こうとしています。

【パネル制作】
小松『私たちはデフ…ええいどうにでもなれ!』

「私たちはデフ/聴覚障がいです」と大きくパネルに書きました。

デフ パネル
デフ パネル

このパネルと、写真共有アプリ インスタグラムの投稿画面を模した、自作の顔はめパネルを持って出発です。

【仮装 出発】
小松『よっしゃ、行くべ!(デフの人が)劣っているわけでもなく、ただ、みんなと同じ立場で同じ人間であるということを伝えたいですね。まあそのためにも、手話という素晴らしい言語とデフのことをより知ってもらえればと思います。はい。』
通行人『すごーい、楽しそう。撮って、一緒に撮って?はい、チーズ…OK、ありがとう~!』
小松『いいね、いいね、今のやっていこう!』

自分でこうした企画をするのは初めてで、慣れないながらも強い意志をもって行進しました。
小松さんが、ここまで積極的に行動し続けるのには理由があります。

【小松さん インタビュー】
私は今まで生きてきて、やっぱり聴覚障がいという理由だけで相手から声をかけられることが少なかったときはありましたね。相手からすると、聴覚障がいに対してどう話せばいいのか…ゆっくり話せばいいのか、紙に書けばいいのかとか、コミュニケーションの方法がわからないから声をかけにくいというそういう壁があるからかもしれないですね。そういうこともあって、昔は自分から話すことはなかったですね。

聴覚障がいが理由で、なかなか話しかけてもらえず、自分自身も人に話しかけるのが苦手になった時期がありました。
しかしその後、気持ちの変化があり、今のように積極的に行動できるようになったと言います。

【小松さん インタビュー】
自分から積極的に行動して話すことによって、相手に対しても思いやりが芽生えてきますし、何か障がいがあればそこを理解してフォローしていく、それが人の思いやりだと思いますし…みんな同じ人間なので健常者やデフの方、男女、年齢関係なくいろんな人たちが交流するという場をつくれたのは非常に重要なことだと感じました。こういった交流の場を、各地で企画を設けて増やしていきたいという思いはあります。

みんな同じ人間だから、触れ合えばきっと分かり合える。
小松さんは障がいがある人と健常者が触れ合う場を設け、互いに一歩踏み出すことが大事だと考えているようです。
小松さんの取り組みが秋田県や東北だけでなく、全国に広がれば、障がいのある人と健常者、両方にとって住みよい社会に近づくかもしれませんね。
まずはラジオを聴いている方にも、その第一歩として簡単に使える手話を教えてくれました。
これは世界で通じるものです。
みなさんもやってみてくださいね。

【サンキュー】
小松『サンキューっていう、ありがとうっていう言葉なんですけど。右手の手のひらを顎に当てて、前に突き出すような…これがサンキュー!』
スタッフ『わかりました。では以上で終了です』
小松『ありがとう。サンキュー!』
(笑いあう声)

おまけ
取材の一環でABS秋田放送の本社を訪れた小松さん。
ナレーションを担当する鴨下望美アナウンサーとツーショットで1枚!

ツーショット
ツーショット

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