ABS秋田放送

2015年1月3日

障子張り

暮れに障子を張り替えた。
毎年張り替えている、わけではない。
気がついたらベロリと紙が剥げていた。あまりにもみすぼらしい有り様になったので、やむにやまれずの張り替えなのだ。

出窓の障子二枚。古い紙を剥がしながら、小さい頃を思い出した。
そういえば母は毎年家中の障子を張り替えていたっけ。こんな暮れも押しつまってからではなく、秋も深まる小春日和にやっていた。
はずした障子の古い紙に「はいどうぞ」と母の号令がかかる。私と姉は小さな拳でボスッボスッと破っていく。カイカーン!わたしたちの仕事はそこでおしまい。あとは母に任せます。
母は古い紙を剥がしたあと、障子の桟をきれいに洗い、乾いたら新しい紙を張り始める。たん、たん、たん、と、糊のついた刷毛を障子の桟にあてて、立てた障子の上の方から順繰りに、桟ごとに。丸まった障子紙を左から右にスルーッと滑らせて端までくると、貝印かなにかのカミソリで丁寧に切り取る。真っ白な紙が徐々に張られていく。母は模様のついた紙はあまり使わなかった。白の無地が一番部屋を明るくすると言って。作業をする母の割烹着と同じ、真っ白な紙だった。
障子は想像力を掻き立てる建具だと思う。

障子に映る影絵は薄墨色なのに、子供の心の中では色を帯びて動き出す。時には楽しく、時にはまた恐ろしく。
そしてまた曖昧に人や物を遮断する。着物を着て座る厳格な父親は障子の向こうでどこか寂しそうだったり。
人の気配を漂わせ、障子は温かな間仕切りだった。

さて。
障子を張りましょう。
私の障子張りは情緒もへったくれもない。
細ーい、障子用の両面テープで障子一枚分を一気に張っていく。しかも障子はプラスチック素材。ペットが引っ掻いても破れない、というもの。ペットもいないのに。障子を破りそうな酔っぱらいは…いるかもしれない。ということで、母に叱られそうなずぼら張りだ。
それでも仕上げると、部屋が明るくなった。やはり気持ちが良いものだ。
新しい年、真っ白な障子はどんな影を映し、どんな光を迎え入れるのだろう。

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