ABS秋田放送

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2017年8月26日

未来につなぐ~デフフットサル日本代表チームの“声”~

「デフリンピック」という言葉、あなたは知っていますか?

【街頭インタビュー】
 「え、なんですかそれわかんない」
 「ちょっと全然想像もつかないんですけど・・・」
 「障がい者とかのかな・・・?全然わかんないですけど、予想で」

デフリンピック。「デフ」とは聴覚に障がいがある人を意味します。
身体障がい者や視覚障がい者、
知的障がい者が参加するパラリンピックとは別に開かれる、
聴覚障がい者だけのオリンピックが「デフリンピック」です。
4年に一度、世界規模で行われ、
今年7月にトルコで23回目となる大会が開かれ、熱い戦いが繰り広げられました。
しかし、日本ではデフリンピックの知名度、そして、聴覚障がい者への理解度は低いままです。

そんな中、
「聴覚障がい者のスポーツ、デフスポーツをもっと広めたい!」
「スポーツを通じて、聴覚障がい者に対する理解を広めたい!」
という気持ちで、聴覚障がい者のフットサル、「デフフットサル」で
世界を目指す青年が秋田にいます。

【小松さん】
今回のデフリンピックはサッカーだけで、
もちろん他のスポーツはあるけど、フットサルはまた別ということになりまして。
再来年にワールドカップに出るために頑張っているところです。

秋田市に住む小松祐樹さん、25歳。
生まれつき耳が不自由で、補聴器がなければほとんど聞こえません。
小松さんは、この夏、大きなチャレンジをしました。

【小松さん】
今回の合宿で、最終選考会ということもあるので、より引き締めて、
代表として選ばれるようにベストを尽くしていきたいと思います。

デフフットサルでワールドカップに出場することを目指して、日本代表候補合宿に臨んだ小松さん。
合宿先には、同じく聴覚障がいがある選手が集まり、みんなが、“同じ志”を持ってプレーをしていました。

未来につなぐ~デフフットサル日本代表チームの“声”~

8月11日。
神奈川県 ミズノフットサルプラザ藤沢で、
デフフットサル日本代表候補の合宿が、
3日間の日程で始まりました。
代表監督、川元剛(たけし)さんは意気込みを話しました。

【川元監督】
デフフットサル日本代表は、来年度行われるワールドカップ予選に向け、がんばっています。応援よろしくお願いします!

この合宿に、秋田市の金融機関で働いている小松祐樹さんの姿がありました。
小松さんは、これまで、仕事を終えてから地元の社会人チームでフットサルの練習を続けてきました。

小松さんは小学生の時から野球を続けていましたが、肩を痛めて断念。
そんなとき、知り合いがサッカーやフットサルを通じて聴覚障がいのことをPRしていると知り、半年前にフットサルを始めました。

フットサルは、主に室内で行われる5人制のサッカーです。
試合時間は前半後半ともに20分。サッカーのおよそ半分の時間です。
ピッチの広さはサッカーのおよそ3分の1。
ボールはフットサル専用で、サッカーボールよりも弾みにくいものを使っています。
基本的なルールはデフフットサルも通常のフットサルも同じですが、ひとつ、大きく異なる点があります。

【小松さん】
補聴器をつけてはいけないルールがあるので、ほぼ聞き取れないですけれども、簡単な手話だったり、左だ!右だ!などやりながらプレーしてますね。

「補聴器をつけてはいけない」というルール。
補聴器には性能差があるため、どの選手も、耳の聴こえない状態でプレーするという公平性のために決められています。
聴こえないことによる難しさや、面白さはなんなのか。
デフフットサル日本代表の選手2人に聞きました。

【東海林選手】
聴こえない選手同士のフットサルになるので、コミュニケーションの方法が声ではないというところが面白さであり難しさであると思います。
たとえば指差しの指示とか、あとは手を上に伸ばして「自分がマークするよ」とか、そういう視覚から見える指示の出しあいが必要な場面がすごく多くて、それをもって次をどう動くのか判断するのかっていう面白さはあると思います。

【設楽選手】
デフフットサルの難しさはひとりひとり見る視点、見る景色が違うため、イメージをひとつにするっていうのが難しいと思っております。
面白さは、先ほども言った通りみんなひとりひとりイメージが違うので、それがひとつになったときはすごい嬉しいし、そこが魅力だと思っております。

秋田市から合宿に臨んだ小松さんは、デフフットサルでは「目」が
大事だといいます。

【小松さん】
耳が聴こえない分、「目」、要はアイコンタクトを普通の人より、より取る必要があるので、走り回りながら仲間とのアイコンタクトを取るのが難しいですね。
でも逆に言えば、アイコンタクトがうまく取れて、点に結びつけることができれば、やっぱり「よっしゃ!」ってなるし、ゴールを決めた瞬間はみんな決めた選手のところに行って喜びを分かち合いますね。

身振り手振りでの連携やアイコンタクト、イメージの共有。
言葉がないからこそより深く通じ合い、プレーがひとつになった時に感じる喜びが、デフフットサルの魅力のひとつかもしれません。

神奈川県で行われた、デフフットサル日本代表候補の合宿。
この合宿で、代表選手が選び出されます。
秋田市の小松さんは、この競技を始めてまだ半年。
そんな短期間で日本代表の最終選考にエントリーできたのには、理由があります。
5年前から代表チームのトレーナーを務める橋本賢太さんが話します。

【トレーナー 橋本賢太さん】
デフフットサルの現状についてなんですけど、競技人口は日本でもかなり少なくて、やはり今は誰でも入れるという形であったり、競技人口が少ない中で、やりたいという有志を集めてやっているのが現状なので・・・
そこを変えて行くというのが現段階です。

今回の候補合宿も協会からの召集ではなく、参加者を公募する形で行われました。
日本における、デフフットサルが抱える課題は他にもあります。
日本ろう者サッカー協会 理事の田口さんに伺いました。

【日本ろう者サッカー協会 理事 田口さん】
まず「デフリンピック」という言葉の認知度が、日本では11%しかありません。
日本におけるデフリンピックとかデフのサッカー、フットサルを知っている人はまだまだ少ないということと、聴覚障がいそのものの理解が少ないということが挙げられます。

2014年に行われた、日本財団パラリンピック研究会が行った調査によると、日本でのデフリンピックの認知は、11.2%でした。
海外を見てみると、韓国は59.4%、オーストラリアは30.1%、
アメリカは25.5%という数字が出ています。
今年7月にトルコで行われたばかりのデフリンピックでは、日本人選手が金メダル6個、銀メダル9個、銅メダル12個を獲得するなど大活躍でしたが、そうした活躍も、国内のメディアではなかなか取り上げられず、ほとんど知られていません。
もうひとつ、大きな問題も・・・

【日本ろう者サッカー協会 理事 田口さん】
それから、日本代表活動を行うにあたって、選手の自己負担がまだまだ大きくて、経済的な負担がかかっています。

今回小松さんが参加した合宿も、ひとり1万3,000円の参加費と、それぞれ会場までの交通費が自己負担になっています。
自己負担も大きいのに、なぜ世界を目指し続けるのか。
日本代表チーム キャプテンの東海林選手が話します。

【東海林選手】
2年後に世界大会があります。
前回は7位だったので、今回はベスト4。
そしてメダルを目指していきたいと思います。
耳が聴こえなくてもこれだけのことが出来るってことは伝えていきたいと思っています。
フットサルをやっていて、健常者の人から「あいつ耳聴こえないんだぜ。すごいね」って思われるような人になりたいというところと、それだけできるっていう事は知って欲しいと思います。

「耳が聴こえなくても、世界で活躍できる」
その自信を胸に、副キャプテン 設楽選手は、聴覚障がい者たちに、こんなメッセージを送ります。

【設楽選手】
やっぱり耳が聴こえないって言って、コミュニケーションがとれないとか、手話がわからないって言う人がたくさんいると思うけど、もっと、耳が聞こえない人たちが自分から積極的に社会に出て、少しでも自分から動くっていうことを大切にして欲しいと思います。

未来の子どもたちのために。
この思いは、小松さんも一緒です。

【小松さんの思い】
子どもってさまざまな情報を得て、脳を発達させているので、耳が聞こえない子どもだと、その脳の発達が遅れてしまって、周りとの差が大きく広がって置いていかれてしまう。
そういったことが私が小さいときあったので、そういったことをなくすために、自分が大変な思いをしたり、苦労してきたことを周りの人たちにも伝えて、未来の子どもたちが情報を取ることができなくて、周りとの差を広げて遅れてしまわないように、その差をいかになくすか、そういった活動をしたいという思いがありました。

小松さんは今、最終選考の結果を待っています。
代表に選ばれれば、次の舞台は来年のアジア予選。
そして2年後のデフフットサル ワールドカップが待っています。

耳が聴こえない。
そのことできっと思い悩み、苦しんだこともあるはず。
それでも、自分たちの活躍で子どもたちに夢を。
そして聴覚障がい者の未来を。
その思いで、小松さんはチームとともに挑戦を続けます。

2017年4月29日

手でつなぐ~聴覚障がい者 小松祐樹さんの声~

スポットライトは当たらなくても、信念を持って目標に向かっている人の声を、本音を、聴いてみたい-
毎月最終土曜日にお送りする「Voice ~あの人の声を聴きたい~」。
4月29日は「手でつなぐ~聴覚障がい者 小松祐樹さんの声~」をお送りしました。

【小松さん】
小さいときから、そうだったんですけど、私は耳に関してはあまりよくないので、小さいときから苦労をして、それは今でもそうですけども・・・

秋田市に住む小松祐樹(こまつ・ゆうき)さん。25歳。
生まれつき耳が不自由で、補聴器がなければほとんど聞こえません。
小松さんは会話をするとき、困っていることがあります。

【小松さん】
やっぱりコミュニケーションを取るにあたって、相手の口とか表情が見えないと、相手の言ってることが理解できないことが一番大変ですね。
まあ小さいときからコミュニケーションを取れるようにいろんな訓練を受けてきたんですけど、やっぱりそれは今でも大変なことで、苦労しますね。

コミュニケーションの壁を取り払うことは、
聴覚障がい者への理解につながると考えている小松さん。
健常者との交流を通して、障がいへの理解を訴えています。

秋田市の金融機関で働いている、小松祐樹さん。
会社では普段、主に事務の仕事をしています。
そして、聴覚障がい者とコミュニケーションをとるための資料を自分で作って同僚に配り、障がいへの理解を深めてもらおうと活動しています。

週に1回。小松さんはフットサルの練習に参加しています。
小学生の時から野球を続けていましたが、肩を痛めて断念。
そんなとき、知り合いがサッカーやフットサルを通じて聴覚障がいのことをPRしていることを知り、フットサルを始めました。

富樫さん「運動神経いいんでしょ、足、速い?」
小松さん「はい、走ってます。結構走ってますね!」

小松さんに声をかけたのは、
チームの監督、富樫勇人(とがし・はやと)さん。
小松さんを温かく迎え入れました。

【富樫さん】
なかなか聴覚障がいの人が集まってサッカーやってる場所もないだろうから、やっぱり社会人のチームとかにまぎれて練習って言うのが一番なんじゃないかな。
もともとサッカーって、そんなに言葉が通じなくても出来るスポーツなので、って言うところでは入りやすいところもあったんじゃないかな。

社会人サッカー・フットサルのチーム「FCジェネラル」。
健常者と聴覚障がい者が一緒に練習します。
小松さんは、スポーツを通して、いろんなことを学んでいます。

【小松さん】
小さいとき人とコミュニケーションを取ることが苦手な思いがあったんですけど、スポーツって言葉は使っても、やってる目的はひとつじゃないですか。
目的ひとつのためにみんなでやって行く姿勢があったから、周りとのコミュニケーションを取ることが楽しいと思えるようになって。
へたくそなりに一生懸命頑張って、喋るのはへたくそだけど、自分からコミュニケーションを取って行くことで、相手との距離が縮んで行くのが楽しいと思えてます。

聴覚障がい者がプレーするフットサル競技「デフ・フットサル」。
FIFA、国際サッカー連盟が定めるルールに則り、
日本ろう者サッカー協会がゲームや合宿などを運営します。
小松さんは、今年1月に行われた日本代表候補合宿に参加しました。
今は、2年後に行なわれるデフ・フットサルのワールドカップに出るため、練習を重ねています。

去年10月。
秋田市に「秋田県聴覚障害者支援センター」がオープンしました。
聴覚障がい者を支援する専門のセンターです。

センター長を務めるのは、加藤薫(かとう・かおる)さん。
自身も聴覚障がいを抱えています。
聴覚障がい者が抱える問題を、
手話通訳者・保泉朋子(ほいずみ・ともこ)さんを介して伺いました。

耳が不自由なことによる悩みは、
実は「聞こえが悪い」ということだけではありません。

【加藤薫さん】
皆さんの発音と、聴覚障がいがある方の発音は違います。音声言語というのは、自分の耳にフィードバックして、どんな声なのか、どういう言葉なのか理解しているところがあると思います。
ですから発声の訓練をどんなにしても、自分が音声を聞き取れない以上、認識が難しいという面があります。
自分の声が聴こえないので、自分で声を調節することが出来ないんです。

自分で発した言葉を聴いて確かめて、正しい発音に近づけていく。
健常者なら、当たり前に行っている、
この流れがうまくできないのです。
聴覚障害者支援センターの加藤さんが話を続けます。

【加藤薫さん】
社会に出てから話したけれども、周りに通じないということでショックを受けたという方もたくさんいらっしゃいます。ですからもう少し周りの方々が、聴こえの障がいのこと、または手話について理解してくれればコミュニケーションの方法も考えることが出来るが、それがなかなか出来ていない。
まずは聴覚障がい者の悩みや苦しみについて理解してくださることが一番大切だと思います。

様々な悩みや苦しみを持つ、聴覚障がい者との関わり方について、加藤さんはこんな考えを持っています。

「(聴覚障がい者とのコミュニケーションについて)」
実際に聴覚障がい者の困った問題やコミュニケーションの問題について理解できた、というところから自分も聞こえる立場から聞こえない人たちが社会参加できるように支援をしたいという気持ちに変わる人もいます。
ですので実際には手話サークルですとか手話を学ぶところに参加して聴覚障がい者と交流するところから始めてくれれば、自然に聴覚障がい者に対する理解も深まるのではないかと思っています。

今年4月1日。秋田県で「手話言語条例」が施行されました。
手話をひとつの言語として認め、全ての県民が、障がいがあってもなくても、スムーズに意思疎通を行うことができる社会を目指すために制定されたものです。

この条例が施行された日。
新しく、県公認の手話サークルも誕生しました。
サークルの名前は「こみっと」。秋田に住む20代の若者を中心に、楽しみながら手話を普及させるために作られました。
現在会員は10人。小松祐樹さんもメンバーです。

サークルの代表、酒井敬幸(さかい・たかゆき)さんを中心に
手話を学んでいます。

酒井さん「この手話わかりますか?」
メンバー「(考える様子)」

小松さんは酒井さんのサポート役!
メンバーと小松さんはうまく手話でやり取りできているのでしょうか?

(メンバーの声⇒小松さん)
メンバー「サークルにも聴覚障がい者の人がいるので、そういう人たちと少しだけど会話できるようになったところ。楽しいと感じてます。」

スタッフ「すごく楽しそうだった」
小松「楽しい!なんていうんだろうね、普通に手話で普通の会話が今までにはなかった経験で、こんなに手話だけで話するのが楽しいものなのか。そういうことを感じながらコミュニケーションをただ普通に取っていくのが楽しいですね。」

『普通のコミュニケーションが楽しい』。
「こみっと」での手話のやり取りは、私たちが普段言葉を喋って会話をするのと同じくらい当たり前。当たり前のコミュニケーションが小松さんにとっては幸せなことでした。

耳が不自由でも楽しく交流が出来る「こみっと」。
サークル代表の酒井さんはこんな思いを持っています。

【手話サークル「こみっと」代表・酒井さん】
もともと自分は仙台の東北福祉大学にいたんですけど、そこで手話をサークルでやってまして、昨年秋田に戻ってきたんですけど、なかなか手話をしている人口が秋田には少ない。
もちろんサークル等もあったんですけど若い人がいないというのが現状で・・・若い人がいないってことは普及ももちろんしないですし、言語として認めたのであれば発信していかないとやる人もいなければっていうので、やりやすい環境を作りたかったというのと、手話、自分は楽しいと思ってやってるんですけど、その楽しさをもっと広めていきたい。若い人にもっとやってほしいというので、立ち上げました。
今後は秋田県の聴覚障がい者の団体と共に、イベントやインターネットで情報を発信するなどして、手話を広めていきます。

フットサルや、手話サークルでの活動を通して、
聴覚障がいについての理解を広めようとする小松祐樹さん。
どういった思いが小松さんを動かしているのでしょうか?

【小松さんの思い】
子どもってさまざまな情報を得て、脳を発達させているので、耳が聞こえない子どもだと、その脳の発達が遅れてしまって、周りとの差が大きく広がって置いていかれてしまう。
そういったことが私が小さいときあったので、そういったことをなくすために、自分が大変な思いをしたり、苦労してきたことを周りの人たちにも伝えて、未来の子どもたちが情報を取ることができなくて、周りとの差を広げて遅れてしまわないように、その差をいかになくすか、そういった活動をしたいという思いがありました。

小松さんは今、より円滑なコミュニケーションのため、手話の表現力を高めようと学んでいます。
手話による人と人とのふれあい。
「手でつなぐ」取り組みが続きます。

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