ABS秋田放送

2017年4月29日

手でつなぐ~聴覚障がい者 小松祐樹さんの声~

スポットライトは当たらなくても、信念を持って目標に向かっている人の声を、本音を、聴いてみたい-
毎月最終土曜日にお送りする「Voice ~あの人の声を聴きたい~」。
4月29日は「手でつなぐ~聴覚障がい者 小松祐樹さんの声~」をお送りしました。

【小松さん】
小さいときから、そうだったんですけど、私は耳に関してはあまりよくないので、小さいときから苦労をして、それは今でもそうですけども・・・

秋田市に住む小松祐樹(こまつ・ゆうき)さん。25歳。
生まれつき耳が不自由で、補聴器がなければほとんど聞こえません。
小松さんは会話をするとき、困っていることがあります。

【小松さん】
やっぱりコミュニケーションを取るにあたって、相手の口とか表情が見えないと、相手の言ってることが理解できないことが一番大変ですね。
まあ小さいときからコミュニケーションを取れるようにいろんな訓練を受けてきたんですけど、やっぱりそれは今でも大変なことで、苦労しますね。

コミュニケーションの壁を取り払うことは、
聴覚障がい者への理解につながると考えている小松さん。
健常者との交流を通して、障がいへの理解を訴えています。

秋田市の金融機関で働いている、小松祐樹さん。
会社では普段、主に事務の仕事をしています。
そして、聴覚障がい者とコミュニケーションをとるための資料を自分で作って同僚に配り、障がいへの理解を深めてもらおうと活動しています。

週に1回。小松さんはフットサルの練習に参加しています。
小学生の時から野球を続けていましたが、肩を痛めて断念。
そんなとき、知り合いがサッカーやフットサルを通じて聴覚障がいのことをPRしていることを知り、フットサルを始めました。

富樫さん「運動神経いいんでしょ、足、速い?」
小松さん「はい、走ってます。結構走ってますね!」

小松さんに声をかけたのは、
チームの監督、富樫勇人(とがし・はやと)さん。
小松さんを温かく迎え入れました。

【富樫さん】
なかなか聴覚障がいの人が集まってサッカーやってる場所もないだろうから、やっぱり社会人のチームとかにまぎれて練習って言うのが一番なんじゃないかな。
もともとサッカーって、そんなに言葉が通じなくても出来るスポーツなので、って言うところでは入りやすいところもあったんじゃないかな。

社会人サッカー・フットサルのチーム「FCジェネラル」。
健常者と聴覚障がい者が一緒に練習します。
小松さんは、スポーツを通して、いろんなことを学んでいます。

【小松さん】
小さいとき人とコミュニケーションを取ることが苦手な思いがあったんですけど、スポーツって言葉は使っても、やってる目的はひとつじゃないですか。
目的ひとつのためにみんなでやって行く姿勢があったから、周りとのコミュニケーションを取ることが楽しいと思えるようになって。
へたくそなりに一生懸命頑張って、喋るのはへたくそだけど、自分からコミュニケーションを取って行くことで、相手との距離が縮んで行くのが楽しいと思えてます。

聴覚障がい者がプレーするフットサル競技「デフ・フットサル」。
FIFA、国際サッカー連盟が定めるルールに則り、
日本ろう者サッカー協会がゲームや合宿などを運営します。
小松さんは、今年1月に行われた日本代表候補合宿に参加しました。
今は、2年後に行なわれるデフ・フットサルのワールドカップに出るため、練習を重ねています。

去年10月。
秋田市に「秋田県聴覚障害者支援センター」がオープンしました。
聴覚障がい者を支援する専門のセンターです。

センター長を務めるのは、加藤薫(かとう・かおる)さん。
自身も聴覚障がいを抱えています。
聴覚障がい者が抱える問題を、
手話通訳者・保泉朋子(ほいずみ・ともこ)さんを介して伺いました。

耳が不自由なことによる悩みは、
実は「聞こえが悪い」ということだけではありません。

【加藤薫さん】
皆さんの発音と、聴覚障がいがある方の発音は違います。音声言語というのは、自分の耳にフィードバックして、どんな声なのか、どういう言葉なのか理解しているところがあると思います。
ですから発声の訓練をどんなにしても、自分が音声を聞き取れない以上、認識が難しいという面があります。
自分の声が聴こえないので、自分で声を調節することが出来ないんです。

自分で発した言葉を聴いて確かめて、正しい発音に近づけていく。
健常者なら、当たり前に行っている、
この流れがうまくできないのです。
聴覚障害者支援センターの加藤さんが話を続けます。

【加藤薫さん】
社会に出てから話したけれども、周りに通じないということでショックを受けたという方もたくさんいらっしゃいます。ですからもう少し周りの方々が、聴こえの障がいのこと、または手話について理解してくれればコミュニケーションの方法も考えることが出来るが、それがなかなか出来ていない。
まずは聴覚障がい者の悩みや苦しみについて理解してくださることが一番大切だと思います。

様々な悩みや苦しみを持つ、聴覚障がい者との関わり方について、加藤さんはこんな考えを持っています。

「(聴覚障がい者とのコミュニケーションについて)」
実際に聴覚障がい者の困った問題やコミュニケーションの問題について理解できた、というところから自分も聞こえる立場から聞こえない人たちが社会参加できるように支援をしたいという気持ちに変わる人もいます。
ですので実際には手話サークルですとか手話を学ぶところに参加して聴覚障がい者と交流するところから始めてくれれば、自然に聴覚障がい者に対する理解も深まるのではないかと思っています。

今年4月1日。秋田県で「手話言語条例」が施行されました。
手話をひとつの言語として認め、全ての県民が、障がいがあってもなくても、スムーズに意思疎通を行うことができる社会を目指すために制定されたものです。

この条例が施行された日。
新しく、県公認の手話サークルも誕生しました。
サークルの名前は「こみっと」。秋田に住む20代の若者を中心に、楽しみながら手話を普及させるために作られました。
現在会員は10人。小松祐樹さんもメンバーです。

サークルの代表、酒井敬幸(さかい・たかゆき)さんを中心に
手話を学んでいます。

酒井さん「この手話わかりますか?」
メンバー「(考える様子)」

小松さんは酒井さんのサポート役!
メンバーと小松さんはうまく手話でやり取りできているのでしょうか?

(メンバーの声⇒小松さん)
メンバー「サークルにも聴覚障がい者の人がいるので、そういう人たちと少しだけど会話できるようになったところ。楽しいと感じてます。」

スタッフ「すごく楽しそうだった」
小松「楽しい!なんていうんだろうね、普通に手話で普通の会話が今までにはなかった経験で、こんなに手話だけで話するのが楽しいものなのか。そういうことを感じながらコミュニケーションをただ普通に取っていくのが楽しいですね。」

『普通のコミュニケーションが楽しい』。
「こみっと」での手話のやり取りは、私たちが普段言葉を喋って会話をするのと同じくらい当たり前。当たり前のコミュニケーションが小松さんにとっては幸せなことでした。

耳が不自由でも楽しく交流が出来る「こみっと」。
サークル代表の酒井さんはこんな思いを持っています。

【手話サークル「こみっと」代表・酒井さん】
もともと自分は仙台の東北福祉大学にいたんですけど、そこで手話をサークルでやってまして、昨年秋田に戻ってきたんですけど、なかなか手話をしている人口が秋田には少ない。
もちろんサークル等もあったんですけど若い人がいないというのが現状で・・・若い人がいないってことは普及ももちろんしないですし、言語として認めたのであれば発信していかないとやる人もいなければっていうので、やりやすい環境を作りたかったというのと、手話、自分は楽しいと思ってやってるんですけど、その楽しさをもっと広めていきたい。若い人にもっとやってほしいというので、立ち上げました。
今後は秋田県の聴覚障がい者の団体と共に、イベントやインターネットで情報を発信するなどして、手話を広めていきます。

フットサルや、手話サークルでの活動を通して、
聴覚障がいについての理解を広めようとする小松祐樹さん。
どういった思いが小松さんを動かしているのでしょうか?

【小松さんの思い】
子どもってさまざまな情報を得て、脳を発達させているので、耳が聞こえない子どもだと、その脳の発達が遅れてしまって、周りとの差が大きく広がって置いていかれてしまう。
そういったことが私が小さいときあったので、そういったことをなくすために、自分が大変な思いをしたり、苦労してきたことを周りの人たちにも伝えて、未来の子どもたちが情報を取ることができなくて、周りとの差を広げて遅れてしまわないように、その差をいかになくすか、そういった活動をしたいという思いがありました。

小松さんは今、より円滑なコミュニケーションのため、手話の表現力を高めようと学んでいます。
手話による人と人とのふれあい。
「手でつなぐ」取り組みが続きます。

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