ABS秋田放送

2015年3月28日

灯台のひとり言

僕は、灯台。
男鹿の入道崎北緯40度東経139度のところに立っている。
黒と白の縞模様になっていることと、この男鹿の景観とあいまって、全国の灯台50選にも選ばれている。
僕は参観灯台といって、中を見学することができる灯台なんだ。
東北では、福島の塩屋埼灯台と僕と二ヶ所だけ。
もしかすると、子供の時遠足で、僕の内部を見学したことがある人もいると思う。
115段の階段は狭くて上りもきついよね。
けれど、上りきると僕のライトを間近で見ることができるし、
なんといってもそこからの日本海の眺望は素晴らしい。
因みに僕は地上からの高さが28メートル近くあるんだ。
冬の間、参観はお休みだけど、今年も4月18日から始める予定だ。人々が集う季節は僕も楽しい。
眼下に広がる芝生が緑になると、日中入道崎は賑わいを見せる。
おばあちゃんとお母さんとちいちゃな女の子は芝生に敷物を敷いておにぎりを食べている。
主婦グループは石ころと草の道で、ヒールの足元を少し気にしながら芝生を歩く。
ウニ丼でも食べてきたかな?
断崖近くでカメラマンは奇岩に縁取られた男鹿の海を撮る。観光バスもやってくる。
最近は県外ばかりか外国からのお客さんもずいぶん目立つようになった。
土産物屋のおばちゃんたちも活気づく。イカを焼く匂い、サザエのツボの中から汁が滴る。
民謡が流れ、なまはげの人形が吠える。犬も吠える。カモメが鳴く。

僕の足元には北緯40度のモニュメントがある。
男鹿で採れる安山岩で作られたモニュメントは日時計にもなっている。
たびたびこのモニュメントの上で海を眺めていた老夫婦。最近見なくなったけれどお元気だろうか。
並んで座るカップルは夕陽の時刻までいるのだろう。
もし、熟した柿のような、あの夕陽を見ることができたら、二人は運命を感じるかもしれない。
それくらい入道崎の夕陽は感動だ。
日が沈むと辺りはとたんに真っ暗になる。昼間の岬とは全く違い、静寂が訪れる。
僕はライトを灯し、航行する船の助けとなるように、15秒に一度瞬きながら漆黒の海を照らす。
僕の灯りは約37キロも届くのだ。

深夜の入道崎。僕の頭上は息をのむ星空だ。
プラチナの砂のような天の川からいくつもの星が流れる。
無窮の彼方から放たれるその光は僕の憧れでもある。
四年前、あの震災の夜、電気が停まった被災地には無数の星が輝いた。
見たこともない星空だったという。
まるで、津波に流された大切な人たちが一斉に星になったかのようだったと伝える人もいた。

この日本海も津波を経験した。
有り得ないと思っていた津波で幾人もの方が犠牲となった。あの時の邪悪な海を僕も忘れない。
自然は美しく感動的だ。と同時に、抗えないほどの脅威で、僕たちを震えおののかせる。悲しませる。
でも、僕たちは下を向かずにそこから学ぼう。自分に何ができるかを。
僕も、僕のできることをする。
僕の光は遠く及ばないけれど、僕のできる力で、海の安全を守りたい。

空が白んできた。
僕は灯をおとす。
最近は夜明けが早くなってきた。
胴体に当たる風も変わった。
もうすぐ春。今日はどんな人がここを訪れるだろう。

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